【秋の季語=初秋(8月)】新涼/涼新た 秋涼し
「涼し」は夏の季語ですが、「残暑」を経て、秋らしくなってきたときの涼しさのことを、改めて涼しくなってきたという意味で「新涼」と呼びます。『俳諧御傘』(慶安4年、1651年)に初出。
【新涼(上五)】
新涼や精進料理あきもする 高濱虚子
新涼や白きてのひらあしのうら 川端茅舎
新涼の草の照りゆく昃りゆく 京極杞陽
新涼や女に習ふマンドリン 日野草城
新涼の身にそふ灯影ありにけり 久保田万太郎
新涼の雨を真近に眺めをり 波多野爽波
新涼の大根おろし山なりに 能村登四郎
新涼や一椀の粥かがやけり 能村登四郎
新涼とうなづき顔にをりにけり 森澄雄
新涼の水の重たき紙コップ 山本紫黄
新涼や持てば生まるる筆の影 鷹羽狩行
新涼や素肌といふは花瓶にも 鷹羽狩行
新涼の漁火に風あるらしき 西村和子
新涼や知らぬ赤子を妻あやし 小島健
新涼や夕餉に外す腕時計 五十嵐秀彦
新涼やはらりと取れし本の帯 長谷川櫂
新涼の橋より橋の見ゆる景 片山由美子
新涼やむなしく光る貝釦 片山由美子
新涼や三回試着して買はず 田口茉於
【新涼(中七)】
泣き腫らす眼に新涼の木がひとつ 大塚凱