【第5回】秋櫻子の新年詠

【第5回】
秋櫻子の新年詠


あけましておめでとうございます。令和8年になりましたが、新年ということで、百年前の新年詠について取り上げてみたい。角川書店の現代俳句大系 第一巻には昭和5年から9年までに出版された句集が収録されている。今回は水原秋櫻子「葛飾」の新年詠を取り上げたい。

元日や旅のめざめに濤の音  秋櫻子

秋櫻子自身による序に写生俳句についての二つの態度が述べられている。その一は「自己の心を無にして自然に忠実ならんとする」態度、その二は「自然を尊びつつも尚、自己の心に愛着を持つ」態度である。秋櫻子自身は、その二の態度をとる作者であると宣言している。掲句にも、このその二の態度がよく顕れているように思う。「濤の音」には、作者が感じている元日の厳かさや旅先での清新な心持が込められているようだ。元日の海が直接みえてしまうと類型化されてしまうきらいがあるが、掲句は室内で聞こえる波の音のみで海自体を見せないようにしながら、却って雄大な新年の海を感じさせるという巧みさがあると思う。

令和8年は、どのような句に巡り合えるでしょうか。皆様のご健吟をお祈りいたします。

(庄田ひろふみ)


【執筆者プロフィール】
庄田 ひろふみ(しょうだ・ひろふみ)
昭和51年生、平成11年より天為同人
令和7年 一句集「聖河」上梓



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