【夏の季語=三夏(5-7月)】章魚(蛸)
麦が実ることから「麦秋」といわれる5-6月に獲れるマダコは「麦藁蛸」と呼ばれ、皮が柔らかく1年のうちで最もおいしくなるといわれている。とくに西日本では、瀬戸内海の明石ダコ、大阪湾の泉ダコなど、昔からおいしいタコが身近にあったことから、「半夏生」にタコを食べるという風習がある。
とくに大阪ではタコは“ハレの食”で、昔から『天神蛸』と呼ばれて夏祭のご馳走としても欠かせない。例年7月25日に本宮が催される大阪天満宮の天神祭において、蛸は「鱧」と共になくてはならない行事食である。
中国語では通称として「章魚」、古称として「蛸」の漢字が当てられる。
「飯蛸」は春の季語。
【章魚(蛸)(上五)】
大蛸のもぢやらもぢやらと近づき来 奥坂まや
蛸の恋かたみに足を網目より 小澤實
章魚濁るむかしむかしの傷のいろ 瀬間陽子
【章魚(蛸)(中七)】
おどろけば章魚のあたまに雲きたる 渡邊白泉
【章魚(蛸)(下五)】
わが骨を納むるによき蛸の壺 綾部仁喜
中空を辭すとき来たる干蛸に 中原道夫
俎板に広がつてゆく蛸の鬱 柴田奈美
【その他の季語と】
蛸壺やはかなき夢を夏の月 芭蕉
しぐるるや切られて白き蛸の肌 鈴木真砂女