【新連載】
歳時記のトリセツ(1)/村上鞆彦さん
今年2022年、圧倒的な季語数・例句数を誇る俳句歳時記の最高峰『新版 角川俳句大歳時記』が15年ぶりの大改訂!
そんなわけで、このコーナーでは、現役ベテラン俳人のみなさんに、ふだん歳時記をどんなふうに使っているかを、おうかがいしちゃます。歳時記を使うときの心がけ、注意点、あるいは歳時記に対する注文や提言などなど……記念すべき第1回は、「南風」主宰の村上鞆彦さんにご登場いただきました!
――初めて買った歳時記(季寄せ)は何ですか。いつ、どこで買いましたか。
『新版 季寄せ』(角川書店編)。中学校の終わりか、高校の初めくらい。地元(大分県宇佐市)の書店。
――現在、メインで使っている歳時記は何ですか(複数回答可)。
『俳句歳時記 第五版』(角川ソフィア文庫)、『カラー図説 日本大歳時記』(講談社)。
――歳時記はどのように使い分けていますか。
日々の句作で参照し、句会に持参するのが『俳句歳時記 第五版』。深く調べる必要があったり、例句を多く読みたいときには『カラー図説 日本大歳時記』。
――句会の現場では、どのように歳時記を使いますか。なるべく具体的に教えてください。
選句中、不案内な季語にでくわしたときに参照する。
席題で句作するときに、ぱらぱらめくってヒントを探す。
――どの歳時記にも載っていないけれど、ぜひこの句は収録してほしいという句があれば、教えてください。大昔の句でも最近の句でも結構です。
ありすぎて絞るのに困りますが、私が結社誌の投句欄で毎月の選をして上位で推す句など、南風にとどまらず広く知られて、ひいては歳時記に載ると嬉しいです。その意味で「コンゲツノハイク」は有り難い(笑)
――自分だけの歳時記の楽しみ方やこだわりがあれば、教えていただけますか。
とくにありません。
――自分が感じている歳時記への疑問や問題点があれば、教えてください。
歳時記の上での季節感と、実生活の上での季節感とがずれている季語は、扱いが難しい。
――歳時記に載っていない新しい季語は、どのような基準で容認されていますか。ご自分で積極的に作られることはありますか。
明確な基準はありません。自分の感覚で、これはもう季節の風物として一般的になっているなと感じられれば、それは季語と呼んで差し支えないかと。そういう新しい素材は、自分ではまず作りませんが。
――そろそろ季語として歳時記に収録されてもよいと思っている季語があれば、理由とともに教えてください。
たいていのものは、何かしらの歳時記にもう入っているので……。新たに入れるとすれば、定番になってきたイベントなどでしょうか。
――逆に歳時記に載ってはいるけれど、時代に合っていないと思われる季語、あるいは季節分類を再考すべきだと思われる季語があれば、教えてください。
今の生活ではほとんど見かけなくなったもの、たとえば「春火鉢」や、また四季を通じて出回っている野菜や生花など思い付きますが、歳時記から削除したり、季節を移動させたり、といったことは望みません。歳時記の、生活史の資料としての側面を尊重します。
――季語について勉強になるオススメの本があったら、理由とともに教えてください(複数回答可)。
季語を実践的に理解し身につけるという意味ならば、やはり適当な歳時記を、例句も含めて読み込むのが一番でしょう。
――最後の質問です。無人島に一冊だけ歳時記をもっていくなら、何を持っていきますか。
『新版 季寄せ』(角川書店編)。初心に戻って。軽くもあるので。
――以上の質問を聞いてみたい俳人の方がもしいれば、ご紹介いただけますか。テレフォンショッキング形式で…
北海道や沖縄の方は、歳時記とどう付き合っておられるのか興味があります。安里くんがよいかなと思いましたが、いま連載をしていますね。となると……、北海道の橋本喜夫さん、鈴木牛後さん(お二人とは、ぜんぜんお付合いはないのですが)、それから音羽紅子さん(早稲田の後輩です)。
――お忙しいなか、ご協力ありがとうございました。次回はどなたにご登場いただけるのか、楽しみにお待ちください。
【今回、ご協力いただいた俳人は……】
村上鞆彦(むらかみ・ともひこ)さん
1979年、大分県宇佐市生れ。現在、「南風」主宰・編集長。俳人協会会員。著書に句集『遅日の岸』、『芝不器男の百句』など。東京都葛飾区在住。
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】