【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2025年1月分】
読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」、先月からリスタートしました。今月は4名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございます。
アイロンを広く滑らせ葉月かな
森 はな
「濃美」
2025年1月号より
「広く滑らせ」が素敵。ワイシャツの背中かハンカチか。滑らせた跡のシワのない滑らかな布地に平らかな心持ち。「滑らせ」に軽々とした体の動きあり、滑りゆく辺りに爽やかで明るい「葉月」の空間が広がっている。たくらみのない美しさ。
(小松敦/「海原」)
落ちさうにおほきな月や発病す
兼城雄
「鷹」
2025年1月号より
下五の着地に驚く。「発病」だから自分の病名を知っていて、ついにその症状が出てきたのだろうか。ひょっとすると遺伝の病なのかもしれない。心身ともに少し疲弊した主体には、いつもよりも月が大きく重たく感じられるのだろう。町の灯とともに地球の重力も重なってくる。読みすぎかもしれないが、「病」の一字から人の生きる時間を想起し、「落ちさう」という語からは自然物の持つ時間を意識する。「おほきな月」と小さな人間の対比を考える。病について、生死について、人間について、人類について、宇宙について思索したくなる一句。
(磐田小/「南風」)
鯉を飼ふ家の小暗き寒露かな
黒澤麻生子
「秋麗」
2024年12月号より
鯉を飼うということは、庭に池があるということだ。つまり田舎のお金持ちなのだ。この句では、「鯉を飼う家は小暗い」と言っている。その身も蓋もない、鋭い把握がとても好きだ。かつては富の象徴であった鯉が、いまや辛気臭さの象徴になっている。季語「寒露」は露が霜になる、10月8日ごろのこと。本格的に寒くなっていく頃、この家はますます暗さを増す。
(千野千佳/「蒼海」)
仲直りせし子等に切る西瓜かな
中村恵美
「ホトトギス」
2025年1月号より
子供はおそらく三人以上はいると思う。西瓜がそう思わせている。何人かいるから西瓜を切ったのであって、鮮やかな赤い色は、仲直りした子供たちの気持ちを反映している。西瓜を切る人の心の動きもみえる。仲直りした子等に食べさせたいと思ったこと、切り分ける間の高揚感、子等を西瓜の周りに集める声。子等も、切る人も、もちろん西瓜も、どれもがみずみずしく生命力にあふれている。
(弦石マキ/「蒼海」)
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2025年1月31日
*対象は原則として2025年1月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2025年2月5日
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/