米国のへそのあたりの去年今年 内村恭子【季語=去年今年(冬)】

日本と比べると、ニューヨークは日本より14時間、カンザスは日本より15時間遅く新年を迎えることになる。ということはカンザスが新年を迎えるのは、日本の元日の午後3時。もしかしたら作者は、日本に身を置いていて、元日の午後3時に、〈米国のへそのあたりの去年今年〉だなあ、と思っているのかもしれない、とも思えてきた。

アメリカにいて体験しているにせよ、アメリカを離れて思いを馳せているにせよ、作者の行動範囲、想像範囲が広いところも掲句から自由自在な気分が立ち上がってくる理由かもしれない。

さらに読み返すうちに、アメリカが移民の国であることに思い至ると、ここに住む大多数の清教徒の子孫のみならず、多種の少数民族や先住民の、それぞれにとって伝統的な〈去年今年〉に思いを馳せることもできるのだ。

そんな少数民族の一つ、日本人である筆者夫妻の〈去年今年〉。巷には日本の正月の気配は全くといっていいほどないが、毎年、自宅では鏡餅を飾り、大晦日は年越し蕎麦、元旦は雑煮とお節にて、正月を祝っている。おかげさまで穏やかに2021年を迎えることができ感謝するばかり。

さて、アメリカを鯛焼きに見立てるとしたら、きっとニューヨークは尾びれあたり。読者の皆さんの安全と健康と幸せを祈って、米国の尾びれから、

謹賀新年!

Happy New Year!

月野ぽぽな


【執筆者プロフィール】
月野ぽぽな(つきの・ぽぽな)
1965年長野県生まれ。1992年より米国ニューヨーク市在住。2004年金子兜太主宰「海程」入会、2008年から終刊まで同人。2018年「海原」創刊同人。「豆の木」「青い地球」「ふらっと」同人。星の島句会代表。現代俳句協会会員。2010年第28回現代俳句新人賞、2017年第63回角川俳句賞受賞。
月野ぽぽなフェイスブック:http://www.facebook.com/PoponaTsukino


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