めちやくちやなどぜうの浮沈台風くる秋元不死男【季語＝台風（秋）】

ハイクノミカタ

めちやくちやなどぜうの浮沈台風くる　秋元不死男【季語＝台風（秋）】

2023/8/18
ハイクノミカタ, 塚本武州
1901年生まれ, 1977年没, 「天狼」, 「氷海」, どじょう, な, の, めちゃくちゃ, 台風, 来る, 浮沈, 秋の季語, 秋元不死男

めちやくちやなどぜうの浮沈台風くる

秋元不死男

　８月１５日、関西に台風７号が直撃した。筆者はちょうど神戸の自宅にいたので、台風直撃を経験した。幸いにも大事に至らずに済んだが、翌日が大変だった。８月１５日、JR東海は台風接近により東海道新幹線の大阪から名古屋まで終日運休をアナウンスしたので、神戸の自宅に引きこもり、引越し前の片付けをしていた。８月１６日、台風が北の海上へと移動し、JR東海は始発から新幹線を運行すると発表したので、筆者はほぼ始発の新幹線に乗り東京へ向かった。ところが、乗車して２時間程度たった静岡駅付近で新幹線が緊急停車した。理由は、新富士駅付近で１時間に６０m m以上の大雨が降り、新幹線が走る基準値を超えたので運転を見合わせたからだった。また富士川が決壊するかもしれないとのことで、雨が小康状態になり、安全が確認できるまで発車を見合わせるとのことであった。この状態でまず２時間程度待つことになった。その後、雨が少しおさまった隙に新幹線は動き出し、富士川を渡り、新富士駅に到着した。しかし、本来の停車駅ではないのでドアは開かず、ただ停車しただけであった。その後、刻むかのように三島駅につき、なんとかかんとかでやっと新横浜駅に到着した。新横浜駅は小雨は降っていたが運行に支障ない、あと一駅と思ったていたらこの考えが甘かった。先の品川駅、東京駅に下り電車が発車できずに待機していたため、我々の新幹線が到着するホームに空きがなく、新横浜駅に足止めとなった。結局、約２時間後、品川駅に空きができたので、なんとか品川駅に到着し下車した。神戸の家を出てから、９時間半が経過していた。その後もこの新幹線のダイヤは乱れ続け、８月１７日も影響が出たと聞いている。恐るべし、台風７号である。

めちやくちやなどぜうの浮沈台風くる　秋元不死男

　掲句は、台風が来ることを察知したドジョウがめちゃくちゃに浮き沈みを繰り返した様子を写生した句である。地震を察知するとナマズが暴れる、雨が降る前はツバメが低空飛行するとほぼ同義でドジョウも台風を察知し、不審な動きをしたのであろう。これから起こる災害を予言する不気味な感じがする句である。

　新幹線は２時間以上到着が遅れると特急料金を払い戻すシステムになっている。筆者はこの払い戻し料金を原資に品川駅の立ち食い寿司で、ドジョウではなくウナギを堪能した。最後はほんのりといい気持ちになり、東京の自宅へ帰っていった。

（塚本武州）

【執筆者プロフィール】
塚本武州（つかもと・ぶしゅう）
1969 年、立川市生まれ。書道家の父親が俳号「武州」を命名。茶道家の母親の影響で俳句を始める。2000年〜2006年までイギリス、フランス、2011年〜2020年までドイツ、シンガポール、台湾に駐在。帰国後、本格的に俳句を習い、２０２１年４月号より俳誌『ホトトギス』へ出句。現在、社会人学生として、京都芸術大学通信教育部文芸コース及び博物館学芸員課程を履修中。神戸市在住。妻と白猫（ユキ）の３人暮らし。