【春の季語】薄氷

【春の季語=初春(2月)】薄氷

春先に水の表面がうすく凍りついていること。

「薄氷」は四音では「うすらい」、五音では「うすごおり」と読み分ける。

それぞれの歴史的仮名遣いは、「うすらひ」・「うすごほり」。

「薄氷」という語は、和歌において「冬」・「春」の両方にまたがり、連歌では陰暦十月(冬)とされていたが、高濱虚子が『新歳時記』を編むにあたって、「春の季語」として普及させた。


【薄氷(上五)】
薄氷や我を出で入る美少年 永田耕衣
薄氷へわが影ゆきて溺死せり 三橋鷹女
薄氷をのせたる水の動きけり 桂 信子
薄氷にふたたび降りし雀かな 皆川盤水
薄氷の吹かれて端の重なれる 深見けん二
薄氷をひらりと飛んで不登校 清水哲男
薄氷誰も戻らぬ日がつづく 宇多喜代子
薄氷の解けて青空動き出す 高橋悦男
薄氷の筥の中なる逢瀬かな 大木孝子
薄氷に絶叫の罅入りにけり 原雅子
うすらひや天地もまた浮けるもの 行方克巳
うすらひのふれあふおととわかるまで 正木ゆう子
うすらひのこの世を離れはじめけり 野中亮介
薄氷のつめたき水に囲まるる 加藤かな文
薄氷の刃先は水となつてをり 今瀬一博
薄氷を割る薄氷の中の日も 山田露結
薄氷の上なる水や吹かれをる 押野裕
薄氷また来る場所と思ひゐる 日下野由季

【薄氷(中七)】
父病めば空に薄氷あるごとし 大木あまり
人のかげ乗せ薄氷の流れをり 河内文雄
磨崖佛近く薄氷張りにけり 日原傳

【薄氷(下五)】
空を出て死にたる鳥や薄氷 永田耕衣
夢の端を踏むごとく踏み薄氷 鷹羽狩行
根のやうなものがくるりと薄氷に  金丸和代
胎盤の出来るころなり薄ごほり ドゥーグル・J・リンズィー
いちまいの水となりたる薄氷 日下野由季
鳥ごゑに濡れはじめたる薄氷 堀切克洋

【ほかの季語と】
うすらひに水鳥の水尾きてゆるゝ 渋沢秀雄


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】



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