夏の季語

【夏の季語】風鈴

【夏の季語=三夏(5月〜7月)】風鈴

【ミニ解説】

風通しのいい窓辺などに吊るして涼を呼ぶ、夏の風物詩。

「風鈴」には釣鐘をかたどった金属製のもの、球のような吹きガラスのものなどがあります。

日本には鎌倉時代に中国から伝わり、室町時代に上流社会で流行し、江戸時代から庶民のあいだに広まりました。

ふつうは、聴覚と温度感知はつながっていないようですが、小さいころからの刷り込みで、風鈴の音をきくと涼しく感じるようになるのだとか。発明した人、すごいですね。

有名な句に

くろがねの秋の風鈴鳴りにけり 飯田蛇笏

があります。

「秋の風鈴」ですから季節は(夏ではなく)秋、季節外れの風鈴の音が爽やかに、どこか寂しく鳴っています。

【関連季語】秋の風鈴、扇風機、釣忍、団扇、扇など。


【風鈴(上五)】
風鈴や花にはつらき風ながら 一茶
風鈴の音を点でし軒端かな 高浜虚子
風鈴の空は荒星ばかりかな 芝不器男
風鈴を人が鳴らしてゐたる音 後藤夜半
風鈴のどこへも行かず暮らしけり 高橋淡路女
風鈴の下をおさへてはづえしけり 川崎展宏
風鈴があればかなしき時あらん 細見綾子
風鈴の短冊の句が賢すぎ  後藤比奈夫
貝風鈴思ひ出うすれゆきにけり 友岡子郷
風鈴をしまふは淋し仕舞はぬも 片山由美子
風鈴を吊るす母まだゐるやうに 深川知子
風鈴の下に老人牛乳屋 岸本尚毅
風鈴や庭より入る母の家 森賀まり
風鈴のひとつ買はれて音減らす 堀切克洋

【風鈴(中七)】
買ひ戻る風鈴に早や町の風 内藤鳴雪
みちのくの風鈴売って軒傾く 山口青邨
月さして風鈴の影生れけり 山田みづえ
売り声は上げず風鈴売が過ぐ 朝妻力
過敏なる風鈴ありて夫婦の夜 鷹羽狩行
鳴りづめの風鈴の舌すこし切る 伊藤伊那男
水を飲む風鈴ふたつみつつ鳴る 今井肖子
鳴らしつつ探す風鈴吊るところ 下坂速穂 

【風鈴(下五)】
あめつちのさびしさ風鈴売通る 加倉井秋を
晩年を囃しつづける江戸風鈴 足立敏子
戦なき空へ風鈴吊しけり 松内桂子
露地を出て風鈴売りが風になる 小林実
打楽器を並べし中に風鈴も トオイダイスケ

【その他】
月光ほろほろ風鈴の戯れ 荻原井泉水


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