【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2026年1月分】

【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2026年1月分】


月末の恒例行事!「コンゲツノハイク」から推しの1句を選んで200字評を投稿できる読者参加型コーナーです。今月は7名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございます!


あたらしき靴の匂へる炬燵かな
水上ゆめ
「秋草」
2026年1月号より

あたらしい靴が匂っている。ちょっといい革靴や、季語の時期的にもブーツを想像した。革の匂いが強くて、いかにもあたらしい靴の感じがして、わくわくしている。そして下五「炬燵かな」に意表をつかれた。その匂いを感じている状況が、炬燵に入っている状況なのだ。あまり広くないワンルームで、玄関と炬燵のあいだに仕切りがないのだろうか。それとも部屋のなかの全身鏡のまえで靴を履いてみて、そのまま靴が部屋のなかに置かれているのだろうか。いろいろ想像して楽しい。構成の面白い俳句だ。

千野千佳/「蒼海」)


口実のまんまるの月のぼりたる
高橋真美
「秋草」
2026年1月号より

「口実」という抽象語が一句の芯。その内容を具体的に書かないのが妙。
会いに行く口実、出かける口実、帰らない口実。月が人間側の事情に引き寄せられる。
「まんまる」という語の選択がまた素敵で、理屈や言い訳の角をすべて削ぎ落として、受け止めてくれるやわらかさがある。
さあ、今日は満月。まんまるを口実にいっぱい呑みにいこうか。

押見げばげば


卒業証書用の紙漉く一日かな
千々和恵美子
「ふよう」
2025年12月号より

「人類が守るべき無形文化遺産の代表的な一覧」に平成26年、石州半紙、本美濃紙、細川紙が「和紙・日本の手漉和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録された。細川紙は、埼玉県小川町・東秩父村で古くから継承されている伝統的な手漉き和紙。私の住まいにも近く、馴染みがある。小川町立小川中学校の校章の中央に描かれたデザインは、「楮」の葉がモチーフ。小川町の伝統産業や文化を学んでほしいという思いが込められているそうだ。

野島正則/「青垣」「平」「noi」)


引かれつつ犬睨み合ふ秋の朝
黒岩徳将
「街」
2025年12月号より

柵を挟んで盛んに吠え合っている犬がその柵が空いてしまったらお互いに目を背けてしまう。そしてまた柵を閉じると激しく吠え合う。そんな面白動画を見ますが、この句の犬もお互いの飼い主のリードが繋がっているので安心して?睨み合っているのでしょうが、リードが放れたらおとなしくなってしまいそう。人間界にも当てはまりますよね。

慢鱚/「俳句大学」)


麻酔打つやうに菊師が水を差す
増田植歌
「雪華」
2026年1月号より

眼目は「麻酔打つやうに」だろう。動き出さぬよう麻酔を打つかのようにも想像されて妖しく美しい。注ぎ口の細長いじょうろで慎重に水をやる菊師の姿が見える。人形はじっとしているが菊は生きているのだ。この句に出会って改めて「菊師」や「菊人形」について調べてみた。菊人形が纏っているのは切り花ではなく、水苔等で根巻きした根付の花だそうで、頻繁に水やりするそうだ。近所の公園で開催される菊花競技会の片隅に菊人形が立っていた。あまり関心を払って見たことがなかったが、今年はもっとじっくり観察してみようと思う。

小松敦/「海原」)


旅なれば手をつなぐ夫秋の暮
坂本遊美
「都市」
2025年12月号より

夫婦は子育てを終え、ふたりの時間ができたので旅をしているのだろう。初めて訪れる場所で、お付き合いしていた頃のように夫は妻の手を取り、あれこれ話しながら観光地を回って、その土地の食事を楽しむ。
だが旅が終われば、この楽しく温かな時間が夢だったかのように元の日常に戻る。夫は妻の買い物にしぶしぶついていき、手なんか繋いでくれなくなる。食事中も話はそれほど弾まない。
そんな日常を思うと、この旅が、夫婦ふたりのひとときが終わってしまうのが惜しい。妻のそんな心情が「秋の暮」に託されている。

さざなみ葉/「いぶき」)


長き夜やきのふの栞抜いてより
辻本理恵
「銀漢」
2026年1月号より

季語「長き夜」と本、文字、などとの相性は抜群で、先行句にもよく見られるが、掲句は似ていて非なり。
「きのふの栞抜いてより」から想像されるモノは、本であり、日記であるものの、昨日から今日、そして、恐らく明日に続く作者自身の丁寧な生活ぶりが見える。夜という時間を迎え、自分自身に向かい合う作者。その指先が頁を開き、栞を抜き、机に置き、そして文字を読むなり、書くなりの動作に移る。美しい所作であり、美しい夜長である。

卯月紫乃/「南風」)



【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2026年1月31日
*対象は原則として2026年1月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください
◆配信予定=2026年2月5日ごろ
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/

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