ハイクノミカタ

銀漢を荒野のごとく見はるかす 堀本裕樹【季語=銀漢(秋)】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

銀漢を荒野のごとく見はるかす  

堀本裕樹


旧暦の七夕、今年(2020年)はちょっと遅くて本日、8月25日。

一般的には新暦で七夕を祝うことになっているけれど、基本的には梅雨の最中だから、まず星なんてお目にかかることができない。

さて掲句に出てくる「荒野」、「こうや」と堅い響きで読むのがよいか、「あらの」と柔らかい響きで読むのがよいか。

前者なら、硬質な現代詩のようで、作者のまなざしの先にある(必ずしも明るくはない)未来を思う。

後者でいえば、新約聖書には「荒野(あらの)の誘惑」というエピソードがあることを思い出す。

40日にわたってイエスが悪魔から誘惑を受けるというもの(英語では単純に「誘惑されるイエス Temptation of Christ」)で、それゆえに作者が運命の岐路に立たされているようなイメージも浮かぶ。

いずれにしても、「荒野」はただ殺伐としているだけではなく、どこかポジティブな可能性を秘めた、しかし困難でもあるような、そんな道を思わせられる言葉である。

作者にとって、立ち向かうものとは何だったのだろうか。

『熊野曼陀羅』(2012)より。

(堀切克洋)

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 団栗の二つであふれ吾子の手は 今瀬剛一【季語=団栗(秋)】
  2. 綿入が似合う淋しいけど似合う 大庭紫逢【季語=綿入(冬)】
  3. 橡の実のつぶて颪や豊前坊 杉田久女【季語=橡の実(秋)】
  4. 個室のやうな明るさの冬来る 廣瀬直人【季語=冬来る(冬)】
  5. またわたし、またわたしだ、と雀たち 柳本々々
  6. からたちの花のほそみち金魚売 後藤夜半【季語=金魚売(夏)】
  7. 船室の梅雨の鏡にうつし見る 日原方舟【季語=梅雨(夏)】
  8. 山茶花の弁流れ来る坂路かな 横光利一【季語=山茶花(冬)】

あなたへのおすすめ記事

連載記事一覧

PAGE TOP