神保町に銀漢亭があったころ

【クラファン目標達成記念!】神保町に銀漢亭があったころリターンズ【3】/武田花果(「銀漢」「春耕」同人)


梶の葉句会のこと

武田花果(「銀漢」「春耕」同人)


 梶の葉句会を開いたのは、銀漢亭の二階にあった編集部や事業部の部屋で、銀漢創刊号を発刊するどさくさの中でした。

 他結社の方と新人も数人交えての小さな句会、男性が一人参加していましたが、女性十五人ほどが膝を詰め合わせての句会でした。

 主宰が毎月第一水曜日の午後早い目に出勤され、夜の準備中、長いときは小一時間の時間を割いて下さいました。

 三時半頃になると階下から今夜のメニューが想像される匂が漂い、音が聞こえてきました。

 お渡しした清記用紙を片手に、選句と講評のためエプロンをとった主宰が「やあ!やあ!」とにこやかな笑みで入って来られます。

 年増の女性たちのさえずりの中、主宰の厳しい選句、優しくも遠慮のない講評に悲喜こもごもの溜息が湧きます。

 主宰の息が近くに聞こえ、時にはその情熱も圧倒するばかり。古い清記用紙を見るとその場面が生き生きと蘇ってきます。

 閉店、コロナ禍と続き、しみじみその貴重な至福の時間が愛おしく思い出されます。

 二度と戻らない時間、どんなに私たちが恵まれ、励まされていたか。

 その時間は主宰自身の創作時間であったのかもしれないのですから。


【執筆者プロフィール】
武田花果(たけだ・かか)
「銀漢」「春耕」同人。


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

クラウドファンディングまだまだ実施中!(2022年7月7日23時59分まで!) 詳しくは下の画像をクリック!(Motion Gallery 特設サイトにリンクします)


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第56回】 白川郷と能村登四…
  2. 神保町に銀漢亭があったころ【第87回】笹木くろえ
  3. 「パリ子育て俳句さんぽ」【1月15日配信分】
  4. 【特別寄稿】屋根裏バル鱗kokera/中村かりん
  5. 【連載】加島正浩「震災俳句を読み直す」第10回(最終回)
  6. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第22回】東山と後藤比奈夫
  7. 「野崎海芋のたべる歳時記」お米のサラダ
  8. 笠原小百合の「競馬的名句アルバム」【第5回】2013年有馬記念・…

おすすめ記事

  1. 【#36】ベトナムの5 dong ke(ナム・ヨン・ケー)と出会った時の話
  2. 春光のステンドグラス天使舞ふ 森田峠【季語=春光(春)】
  3. いけにえにフリルがあって恥ずかしい 暮田真名
  4. 【読者参加型】コンゲツノハイクを読む【2023年3月分】
  5. 来よ来よと梅の月ヶ瀬より電話 田畑美穂女【季語=梅 (春)】
  6. 【春の季語】朧月
  7. 【秋の季語】穴惑
  8. 人とゆく野にうぐひすの貌強き 飯島晴子【季語=鶯(春)】
  9. 田螺容れるほどに洗面器が古りし 加倉井秋を【季語=田螺(春)】
  10. 順番に死ぬわけでなし春二番 山崎聰【季語=春二番(春)】

Pickup記事

  1. 嗚呼これは温室独特の匂ひ 田口武【季語=温室(冬)】
  2. 一つづつ包むパイ皮春惜しむ 代田青鳥【季語=春惜しむ(春)】
  3. 秋天に雲一つなき仮病の日 澤田和弥【季語=秋天(秋)】
  4. 百合のある方と狐のゐる方と 小山玄紀
  5. 【新年の季語】歌留多会
  6. 神保町に銀漢亭があったころ【第42回】黒岩徳将
  7. 【冬の季語】冬帽
  8. 日の遊び風の遊べる花の中 後藤比奈夫【季語=花(春)】
  9. 笠原小百合の「競馬的名句アルバム」【第3回】2010年神戸新聞杯
  10. 命より一日大事冬日和 正木ゆう子【季語=冬日和(冬)】
PAGE TOP