流星も入れてドロップ缶に蓋
今井聖
ドロップ缶という響きがとてもなつかしい。
子どもの頃、ドロップ缶を手に持っているだけでも、何か特別な気持ちがして嬉しかったのを思い出す。缶にドロップがあたってガチャガチャと音を立てる感じや、取り出し口の丸い穴から中身を幾度も覗いたこと。取り出してドロップの色を選ぶ楽しさ。半透明で一つ一つが宝石みたいな形をしていた。
蓋も嵌め込み式のペコッとしたもので、きちっとはまりすぎると開けられなくなったりもした。
そんな一つ一つがとてもなつかしい。
サクマのドロップと覚えていたけれど、正確にはサクマドロップスとサクマ式ドロップスの二種類あって、缶の色も赤と緑と違っていた。
私は赤色の缶を覚えているから、サクマ式ドロップスの方だったんだなあ。
ドロップ缶を手に夜空を眺めていたら、きらりと星が流れた。
私が感じたなつかしさのように、この句は、作者の記憶の中にある遠い日のたいせつな風景と繋がっているように思える。
流星をドロップ缶に入れられたら、どんなにか楽しいことだろう。
きっと缶の中でキラキラしながら、素敵な音を立てるに違いない。
(日下野由季)
【執筆者プロフィール】
日下野由季(ひがの・ゆき)
1977年東京生まれ。「海」編集長。第17回山本健吉評論賞、第42回俳人協会新人賞(第二句集『馥郁』)受賞。著書に句集『祈りの天』、『4週間でつくるはじめてのやさしい俳句練習帖』(監修)、『春夏秋冬を楽しむ俳句歳時記』(監修)。