【春の季語】海市

【春の季語=晩春(4月)】海市

「かいし」と読む。いわゆる「蜃気楼」のこと。科学的にいえば、光の屈折により、遠くの景色が伸びたり反転したりして、実際とは違う景色に見える現象であるが、文学的には想像力をかきたてる、ぼんやりとした春らしい季語である。富山湾は名所として有名で、〈ふるさとにかいしたちしとたびごころ〉という句がある沢木欣一は、富山市生まれの俳人。


【海市(上五)】
海市より便り一片ひるかもめ 橋本榮冶
海市あり別れて匂ふ男あり 秦夕美
海市まで手持ちの時間つかひきる 大河原倫子
海市まで雲を連れゆく汽笛かな  矢野玲奈

【海市(中七)】
ふるさとにかいしたちしとたびごころ 沢木欣一
遺棄されし海市に骨の笛が鳴る 角川春樹
故郷すでに海市の中や母老いし 柴田佐知子

【海市(下五)】
李承晩ラインのあたり海市立つ 茨木和生


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