【春の季語(三春=2月〜4月)】陽炎
地面から立ちのぼる蒸気で空気が乱れ、風景やものが揺らめいて見えること。
光の屈折率の変化によって起こる現象で春に限ったものではないが(むしろ夏場にもよく観察されるが)、「のどか」な感じがするので春の季語となっている。
かげろふの我肩にたつ紙子哉 芭蕉
陽炎や柴胡の糸の薄曇 芭蕉
など、江戸期から多くの句が詠まれてきた。
動詞として「かげろう」と使うこともある。「糸遊」などともいう。
【陽炎(上五)】
陽炎やをさなき竹にをさなき葉 宇佐美魚目
陽炎の理髪店ああおぼえてゐる 冬野虹
かげろふにも躓く母でありにけり 鈴木てる緒
かけろふやくだけて物を思ふ猫 論派
陽炎に葬儀の写真ずつと見せる 中嶋憲武
かげろふや天才にして長き生 生駒大祐
【陽炎(中七)】
いじめると陽炎となる妹よ 仁平勝
子規庵に来て陽炎の客となる 伊藤伊那男
【陽炎(下五)】