【秋の季語】天の川/銀漢 銀河 星河

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【秋の季語(初秋=8月)】天の川/銀漢 銀河 星河

【解説】現在の暦では、七夕が梅雨の時期なので夜空が見えないことが多いですが、太陽太陰暦だと8月上旬から下旬。とくに都会を離れた場所からは、帯のように星々がたくさん集まって見える天の川を見たときの感慨は、ひとしお。

「銀河」「銀漢」の「銀」は、文字通りの色であると同時に、きらきらと輝いているということ。言うまでもなく「河」は「川」のこと。「漢」は、中国由来の用法で、この一字だけで「天の河」のことを表しました。「天漢」ともいいます。

おそらく「天の川」で最も有名な俳句は、芭蕉の〈荒海や佐渡に横たふ天河〉ではないでしょうか。1689年、いまから300年以上も前の作。当時、芭蕉は46歳でした。

この句は、新潟県の出雲崎に泊まった時に詠んだものとされています。ただし、芭蕉は句を残しただけで、当時の詳しい状況については「おくのほそ道」では何も触れていません。芭蕉が出雲崎にいた7月4日ごろ(新暦では8月18日ごろ)、曾良の日記では「夜中、雨強降」となっているので、本当は星空は見えなかったのかもしれません。

当時は、「写生=見たものを描く」という考え方は一般的ではありませんので、芭蕉は「流人の島」としての佐渡の歴史性を思いながら想像的に「佐渡」への挨拶句を詠んだのでしょう。実際に「銀河の序」にはこんなふうに書かれています。

「むべ此嶋は、こがねおほく出て、あまねく世の宝となれば、限りなき目出度島にて侍るを、大罪朝敵のたぐひ、遠流せらるるによりて、ただおそろしき名の聞こえあるも、本意なき事におもひて、窓押開きて、暫時の旅愁をいたはらんむとするほど、日既に海に沈で、月ほのくらく、銀河半天にかかりて、星きらきらと冴たるに、沖のかたより、波の音しばしばはこびて、たましいけづるがごとく、腸ちぎれて、そぞろにかなしびきたれば、草の枕も定らず、墨の袂なにゆへとはなくて、しぼるばかりになむ侍る」。

いろいろな想像を掻き立ててくれる天の川=銀河。

実際には見えても見えなくても、そこにはいろいろな景色が広がっています。

【関連季語】七夕、鵲、星月夜など。


【天の川(上五)】

天の川天の橋立ほのほのや 正岡子規
天の川わたるお多福豆一列 加藤楸邨
天の川禽獣の夢ちらかりて 飯島晴子
天の川逢ひては生きむこと誓ふ 鷲谷七菜子
天の川水車は水をあげてこぼす 川崎展宏
天の川死につゝ渡る役者かな 攝津幸彦
天の川ナイルの尽くるところより 照井翠
天の川吹き散らさないように息 神野紗希

【天の川(下五)】

うつくしや障子の穴の天の川 小林一茶
飛ぶ星に眼のかよひけり天の川  井上井月
あくびする口に落ちけり天の川 正岡子規
丸ビルの屋上園や天の川 赤星水竹居 
子を負うて肩のかろさ天の川 竹下しづの女
鳥一羽ちらつきにけり天の川 寺井文子
やはらかき魚の産卵天の川 寺井文子
家毎(いえごと)に地球の人や天の川 三橋敏雄
彼の世より光をひいて天の川 石原八束
うすうすとしかもさだかに天の川 清崎敏郎
山国に墓ひとつ増え天の川   鷲谷七菜子
ああみんなわかものなのだ天の川 金原まさ子


戸隠や顔にはりつく天の川 矢島渚男
瓶中の蝮の夢や天の川 高野ムツオ
寝袋に顔ひとつづつ天の川  稲田眸子
象の檻長き不在や天の川 久保田哲子
酔ひをれば欲は少なし天の川 山田真砂年
ほの見えてひびきは胸に天の川 佐怒賀正美
石抛る石は吾なり天の川 恩田侑布子
いくたびも手紙は読まれ天の川  中西夕紀
一番に押す停車釦天の川 こしのゆみこ
象の頭に小石のつまる天の川 大石雄鬼
父親に人見知りして天の川 江渡華子

【銀漢】
妻と寝て銀漢の尾に父母います 鷹羽狩行
銀漢の奥のさみしき人通り 鳴戸奈菜
銀漢や合はせ鏡のやうな路地 天野小石
銀漢や兄弟多き曲馬団 日原傳
銀漢や三つの国の銀貨持ち 中田尚子
銀漢の遥か手前でバスを降り 望月周
銀漢はびしょ濡れのまま街の上 月野ぽぽな
一声を発し銀漢跳び越える 近恵
銀漢を荒野のごとく見はるかす 堀本裕樹

【銀河】
虚子一人銀河と共に西へ行く  高濱虚子
女一人佇てり銀河を渉るべく 三橋鷹女
ねたきりのわがつかみたし銀河の尾 秋元不死男
誰かまた銀河に溺るる一悲鳴 河原枇杷男
きらめきて銀河に流れある如し 高浜年尾
麺麭屋まで二百歩 銀河へは七歩 折笠美秋
少年のたてがみそよぐ銀河の橇 寺山修司
またの世の枕に束ね置く銀河  佐藤鬼房
択ぶなら銀河濃きころ羊村忌 倉橋羊村
象使い銀河に集い来て眠る  対馬康子
眠るたび父は銀河に近づきぬ 櫂未知子
銀河濃し水の宅急便届く  浦川聡子

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