野分会十とせ経しこと年尾の忌
稲畑汀子
昨日、大阪へ出張したが27℃の夏日であった。半袖の人が多い中、私だけがスーツの上着とベストを着ていたので少し後悔した。気象庁の発表では、東京都心で今年153回目の夏日になり、150年続く観測史のなかで、年間の夏日の日数としては過去最多を更新した。また、11月に突入しても依然高温傾向が続き、冬の足音はまだ先になるそうだ。俳句の世界では、11月から冬になるのだが、このままだと冬めくのはまだ少し先のようである。昨年のハイクノミカタに、11月10日ぐらいから少しずつ涼しくなってきたと書いてあるので、あと2週間ぐらいはこの気候が続くのかもしれない。
野分会十とせ経しこと年尾の忌 稲畑汀子
明日、10月26日は高濱虚子の長男、高濱年尾の忌日である。年尾が亡くなった1979年10月26日は、『ホトトギス』の若手俳人の会「野分会」が発足し第一回句会と奇しくも同じ日である。娘の汀子が「野分会」を発足したのだが、掲句は10年後の年尾忌に「野分会も10年経ちました」と報告しているようである。野分とは秋の暴風のことで、野の草を吹き分けるほどの風の意味である。野分会のメンバーには暴風雨のなかでも逞しく育ってほしいという願いが込められている。
汀子は2022年2月27日に逝去したが、野分会は今年で発足45年が経ち、50名の会員が、稲畑廣太郎主宰のもと花鳥諷詠の伝統俳句を学んでいる。
(塚本武州)
【執筆者プロフィール】
塚本武州(つかもと・ぶしゅう)
1969 年、立川市生まれ。書道家の父親が俳号「武州」を命名。茶道家の母親の影響で俳句を始める。2000年〜2006年までイギリス、フランス、2011年〜2020年までドイツ、シンガポール、台湾に駐在。帰国後、本格的に俳句を習い、2021年4月号より俳誌『ホトトギス』へ出句。現在、社会人学生として、京都芸術大学通信教育部文芸コース及び博物館学芸員課程を履修中。国立市在住。妻と白猫(ユキ)の3人暮らし。
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