神保町に銀漢亭があったころ【第118回】前北かおる

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閏の会

前北かおる(「夏潮」会員)

私は、藤森荘吉さんのお誘いで、銀漢亭にお邪魔するようになりました。荘吉さんは慶應の大先輩で、「夏潮」でもご一緒させていただいています。俳句教室のメンバーからお酒を飲みながら句会がしたいというリクエストがあったそうで、私にもお声がけ下さりました。第一回の句会を2016年2月29日に行い、今は浜松にお住まいの牟礼鯨さんが「閏の会」と名付けてくれました。

銀漢亭では、いつも奥のテーブルを使わせていただいていました。私は、厨房を背にするあたりが何となくの指定席でした。会の前半は句会なので、酒盗などのつまみとともに軽くのどを潤す程度で進みます。厨房からは絶えずおいしそうな匂いがしてきて、お腹がぎゅるぎゅる鳴りました。料理はすべてお任せでしたが、はじめのうちは大食漢揃いでしたので、がっつり系のメニューをいただいていました。

当時のレギュラーメンバーは、牟礼鯨さんと石丸雄介さんでした。鯨さんはいつも陽気に何やらお話しされ、雄介さんは顔色ひとつ変えずにひたすら飲んでいました。雄介さんとは同業だったこともあって、お開きになったあと居残りで飲むのがいつもの流れでした。

やがて、割と大人の会になったので、珍しい野菜などヘルシーなメニューを用意してくださるようになりました。私が好きだったのは、身の締まった蛸を山椒と一緒にいただく料理でした。少し干してあったのでしょうか、程よい歯ごたえの蛸に山椒の香りが最高でした。

その頃からの常連では真篠みどりさんと親しくなり、私の自宅の句会にも顔を出して下さるようになりました。

この会は日本伝統俳句協会や「ホトトギス」系の結社の方との出会いがあり、ゆっくりお話しもできたので貴重な句会でした。協会の句会に出席したとき、閏の会でご一緒した方とお会いすると心強く思われました。コロナ禍以降、「夏潮」所属の髙橋庸夫さんや林美佐子さんとは継続して句会をしていますが、閏の会でご一緒するだけだった小田仁さんや滝尾真理子さんとはお会いできていません。当たり前のように通っていた銀漢亭がなくなってしまった今、楽しかった時間も遠い昔の出来事のようです。世の中が落ち着いて、また新しい形で再会できる日が待ち遠しく思われます。

↑七夕? 手元にこんな写真しか残っていないのが残念です。


【執筆者プロフィール】
前北かおる(まえきた・かおる)
夏潮」会員。句集『ラフマニノフ』、『虹の島』。ブログ「俳諧師 前北かおる」。YouTube「前北かおる」。



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