コンゲツノハイク【各誌の推薦句】

【新企画】コンゲツノハイク(2021年1月)


セクト・ポクリットでは2021年1月より、「コンゲツノハイク」をはじめます。前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。初回の今月は、14結社にご参加いただきました。お礼申し上げます。来月分(1月31日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。参加は無料です。


コンゲツノハイク 2021年1月
(2020年12月刊行分)

参加結社=「稲」「銀漢」「澤」「磁石」「青山」「蒼海」「鷹」「たかんな」「田」「橘」「天穹」「松の花」「南風」「雪華」


「稲」(主宰=山田真砂年(まさとし)【2021年1月創刊】
寄り道は楽し玉蜀黍に髭    西井久美子
返り花みてゐて思ひ出し笑ひ  上田信隆
百日紅に花のへたりや彼岸入  滝代文平
キャッチャーミットの凹み真つ黒夏の果 岡本秀子
相槌を少し変へたり切山椒   沼田布美
夕立やズックシュポシュポ水吐きて 瀧本萠
旅人の革の鞄よ小鳥来る    中村かりん


銀漢(ぎんかん)」(主宰=伊藤伊那男(いなお)
書初の一画にして躓けり    伊藤伊那男
瞑目は眠りにあらず秋のこゑ  萩原陽里
小指もて秋思のかたち弥勒仏  中村孝哲
虫時雨時にひとつを聞き分くる 山下美佐
北斎の晩年に艶栗を剥く    武井まゆみ
菊膾互ひの命頼りとす     福原紅
幻覚も幻聴も常みみず鳴く   市川蘆舟


「澤」(主宰=小澤實)
赤松の幹亀甲割れや年あらた  小澤實
つゆけしやくわんおんだうもくわんおんも 望月とし江
決別は衝動がよし冬の空    川上弘美
月光や潜水帽に窓三つ     木内縉太
三葉虫として月光を浴びてゐた 山岸樵鹿
機関車の火室始動や寒の暁   新澤岳
インバネス魔都東京を徘徊す  酒井圭子


「磁石」(主宰=依田善朗(よだぜんろう)【2021年1月創刊】
けさの冬眠れるごとき靴を履く 依田善朗
太枝の如く生けたる破魔矢かな 角谷昌子
稲稔る太腿は跳ぶためにある  篠崎央子
肺深く濡れ大阿蘇の霧の中   寺澤佐和子
オリーブの実の黒々と十三夜  寺澤始
鰯の群れ操る糸のなかりけり  吉田祥子
海鳴りを封じ込めたる栗を剥く 飯田冬眞 *

「冬」は異体字



青山(せいざん)」(主宰=しなだしん)
ここよりは海の上飛ぶ帰燕かな  山崎ひさを
切られたるそばから濡れて黒海鼠 しなだしん
あをぞらに雲のひろがる蜻蛉の眼 井越芳子
夫若しねずみ花火に逃げ廻り   坂東文子
括りたる紫苑の同じ高さかな   大島忠治
先生に眼鏡預けてプールの子   武井玖美子
懐かしき制服乗り来冷房車    原美鈴


蒼海(そうかい)」(主宰=堀本裕樹)
火夫は火に餌やる如く蟻を投ぐ  本野櫻魚 *
まつくらな湖をかこみし祭かな  山岸清太郎
ぼうふらの影もぼうふらしてをりぬ 犬星星人
蚊柱がねぢれて触れてゐる門扉  つしまいくこ
印刷の掠れとも蚊の屍とも    杉本四十九士
やまゆりの輪唱のごと香の寄せぬ 鈴木トモオ
二三品ぱぱつと出せるあつぱつぱ 三橋五七

「魚」は異体字


「鷹」(主宰=小川軽舟)
遊ぶ子に母の墓ある小春かな   小川軽舟
大根蒔き如何なる旗からも自由  岡本雅洸
猫消えて三日目の朝冬隣     兼城 雄
氷河湖の暮靄にしづむ花野かな  桐山太志
雪の鴛鴦心中物を観るごとし   沖 あき
爽やかや手話に揺れたる耳飾   原信一郎
集められ寂し木の実も兵隊も   林 隆一


「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)
物干しの主役しばらく吊し柿  小川三胡
足音を聞いて温める夜食かな  宝美佐子
唐茄子の中身はたぶん夏の日々 中島英雄
ワイン抜き猫派犬派の夜長かな 野村英利
鯊入れてバケツの雲を驚かす  奥田卓司
灯の色に秋の気配や夕厨   平井千代子
冬紅葉最期の綺羅を通しけり 吉田千嘉子


(たちばな)」(主宰=佐怒賀直美)
寂光の風湧くところ落し文   金井久子
駒下駄の軽さ木の実を踏む重さ 沖田きみ子
下駄箱に秋日を入れて靴磨く  飯野歌子
鳥の数見せて穭田広ごりぬ   大久保茂
眠る子のまつ毛の上のいわし雲 砂山恵子
すぐ空がある渡良瀬のすすきかな 小池節子
叡山の僧も来てをり茸山    藤原 登


(でん)」(主宰=水田光雄)
水底の藁立ち上がる厄日かな  細川朱雀
夏雲やパンの形に寝転びて   井上圭子
秋の夜の部屋に場所とるギターかな 西川知世
夕空へ伸びてゆきたる踊の輪  神戸美沙子
終戦日鏡にうつるカレンダー  真田えい子
二百十日しまひ忘れの猫の舌  間 恵子
秋燕や一年といふ店構へ    草子洗


天穹(てんきゅう)」(主宰=屋内修一)
秋惜しむ幻住庵へバスを継ぎ  屋内修一
豊の秋声出すコイン精米機   佐々木建成
猪食うて男の色気まだ失せず  山口美智
小春日やとんと死ぬ気がいたしません 野間しげる
名峰を跨ぐ脚絆や松手入    籠田幸鳴
予後の酒断つも菊の日までのこと 山口かずお
騙されに骨董市へ行く小春   塚本一夫


南風(なんぷう)」(主宰=村上鞆彦(ともひこ)
秋灯や喪服に雨の匂ひして   林里美
雲うごき日向うごきぬ冬隣   渡部潤治
露に露落ちてゑくぼの少女かな 北見鳩彦
巻き爪も灰になりゆく星月夜  日野久子
水引の花や犬にも喉仏     若林哲哉
取り落とす書に秋麗の砂細か  戸澤光莉
秋日和大中小の鳥に会ふ    森あおい


「松の花」(主宰=松尾隆信(たかのぶ)
亡き母の白寿の日なりふかし芋 松尾隆信
鰯とはならざる雲の九月かな  横山節子
鬼灯の胸にかさこそ母の忌来  あべみゑこ
白萩のしなりてなほも雨を受く 荒井寿一
はためける芭蕉一気に降り出せり 佐藤公子
戦争を知らぬ親子の水鉄砲   小島風美
球挟み仕舞ふグローブ獺祭忌  興梠 隆


雪華(ゆきはな)」(主宰=橋本喜夫(よしお)
人を恐れず盲目の奈良の鹿   髙橋亜紀彦
日直よまた来る冬の数を記せ  五十嵐秀彦
鯤を釣るルアーは銀河から選ぶ 土井探花
寒蛩のなほ孫の世を問ひにけり 長谷川忠臣
無花果を食ふ守秘義務の沈む腹 鈴木牛後
ガス・施錠指差確認の夜寒かな 大柄輝久江
湯豆腐や大和言葉の崩れゐる  川村暮秋


【次回の投稿のご案内】

◆応募締切=2021年1月31日
*対象は原則として2021年1月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。

◆配信予定=2021年2月5日

◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/



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