てつぺんにまたすくひ足す落葉焚
藺草慶子
落葉焚は童謡の「たき火」の歌を思い出すせいか、どこかノスタルジーな気分にさせてくれる季語だ。
私が小さい頃は、冬になると家の庭先や畑で落葉焚をしている煙があがっているのを見ることができた。
学校でも落葉焚をしたりしていたけれど、今でもしているのだろうか。火災の原因になるので、今では昔ほど大らかに焚火が出来なくなっているように思う。
小学校の裏庭で、たくさんの落葉を掻き集めて、その中にさつま芋を新聞紙だったか、銀紙だったかにくるんで入れた落葉焚の楽しかったこと。
ぶすぶすと煙を上げる落葉の中で燻されていくお芋を今か今かと待ちわびた。
ときどき棒で突くと、ところどころふわっと炎を上げる。
火の強弱の加減は忘れてしまったが、落葉を足して調整していたその光景は何となく今でも覚えている。
掲句、落葉の嵩が減ってきて、また残りの落葉を上から足してゆく。
「てつぺんにまたすくひ足す」が落葉焚の様子をよく描き出していて、すくい足された落葉のたてるかすかな音までも、聞こえてくるかのようだ。
(日下野由季)
【執筆者プロフィール】
日下野由季(ひがの・ゆき)
1977年東京生まれ。「海」編集長。第17回山本健吉評論賞、第42回俳人協会新人賞(第二句集『馥郁』)受賞。著書に句集『祈りの天』、『4週間でつくるはじめてのやさしい俳句練習帖』(監修)、『春夏秋冬を楽しむ俳句歳時記』(監修)。