
大枯野ひとりを奥の間へ通す
正木ゆう子
第三句集『静かな水』より。
一読したとき「大枯野/ひとりを奥の間へ通す」と上五で切って、季語+12音のフレーズと解釈してしまい、奥の部屋へ一人を通す光景と、季語「大枯野」がどう呼応するのか分からず、戸惑ってしまった。ここで正木ゆう子の第一句集『水晶体』に〈わが行けばうしろ閉ぢゆく薄原〉という句があったのを思い出した。この句と近い世界観かもしれない。子供たちが大枯野を進む中、大枯野がひとりを”奥の間”へ通す。”奥の間”は異界かもしれず、神隠しの恐ろしさと、自然への畏怖が込められた一句だ。正木ゆう子の句集には、動物の視点に憑依する句が多いが、意外にも大自然そのものに憑依する句は少なく、むしろ畏敬や畏怖の対象として扱う句が多い気がした。
2025年7月、内野義悠さん主催の正木ゆう子研究会に参加するようになった。初回は『羽羽』を読み、次の回から、第一句集『水晶体』、第二句集『悠 HARUKA』、第三句集『静かな水』と順に読んでいる。一人の作家を複数人で第一句集から精読していく試みは新鮮で、回を経るごとにメンバー全員の読みの精度も高くなっていく様を感じた。一人では到達できなかった解釈や、第一句集から順に読んだからこそ出た読みも飛び出し、句会や吟行では得られない栄養を頂いている気がしている。このセクトポクリットの2月の計4回では、正木ゆう子を取り上げてきたが、読書会での成果はまだまだあるので、また別の機会にどなたかがまとめてくださるだろう。
次回3月からは、いま注目の作家をピックアップしていこうと思う。
(星野いのり)
【執筆者プロフィール】
星野いのり(ほしの・いのり)
1997年生まれ。俳句結社「炎環」同人。俳句雑誌『noi』誌友。現代俳句協会所属。第14回鬼貫青春俳句大賞。第2回全国俳誌協会新人賞。第4回俳句四季新人奨励賞。第6回円錐新鋭作品賞。