【秋の季語】かなかな

【秋の季語=初秋(8月)】かなかな

「蜩」のこと。万葉集にも、

ひぐらしの鳴きぬる時は女郎花咲きたる野辺を行きつつ見べし (巻十七、三九五一)

が見られるように、朝夕に響くその声は、涼感や物悲しさを感じさせ、日本では古来より美しい声で鳴くセミとして文学などの題材にも使われてきた。

そのなかでも「かなかな」は、「蜩」という名称よりも、その鳴き声を思わせる聴覚的な語である。

かなかなのかなかなと鳴く夕かな 清崎敏郎


【かなかな(上五)】
かなかなに母子の幮のすきとほり 石田波郷
かなかなと鳴きまた人を悲します 倉田紘文
かなかなが夕日はなさぬ湖北かな 鷹羽狩行
かなかなや夢にからだを置き忘れ 対馬康子
かなかなや塗ればすうつとする薬 堀切克洋

【かなかな(中七)】
かゝる朝かなかなきけば目も冴えぬ 高屋窓秋
森閑と雨後のかなかな人還らず 楠本憲吉
人の世にかなかなの啼く淋しさよ 後藤比奈夫
み吉野のかなかなに夕影を曳く 稲畑汀子
セルフィーにかなかなの樹の写り込む 若林哲哉

【かなかな(下五)】

【自由律】
いそいでもどるかなかなかなかな 種田山頭火
一雨きてほしくどうやらきそうなかなかな 荻原井泉水


関連記事