とうもろこしごはんがあって情愛も 坪内稔典

 とうもろこしごはんがあって情愛も

坪内稔典

「こういうふるめかしいいい回しってどうなんでしょう。14番の俳句なんですが」

「ふるめかしい」の俳句は、「や」の切れ字を用いた句だった。選句用紙の14番目の句。私は、俳句では、や・かな・けり、などの切れ字をわりと便利に使うんです、と答えた。便利に、という表現については、今のわたしにとってわりとしっくりと来ている。

句会形式のちいさな講座をひらいている。講座のタイトルは「やさしくはじめる俳句講座」という。「やさしく」は易しくでもあるし、優しくでもありたいとの思いからつけた。そして「はじめる」として、向上をめざす場所にもしていきたいという願いも込めている。

「ふるめかしい」と言ったのは、私が講座を開いている施設の職員であり、同僚である。私は俳句講座の講師をしていたら、いつしかここの職員にもなった。面白いな、と思っている。同僚はこんなふうに講座の選句用紙をみてくれて、時々こうして、コメントをくれる。ちなみに同僚は、俳句をまだつくらない。

4月と5月の木曜日、「ハイクノミカタ」を書かせていただきます、内橋可奈子です。口語で俳句を作っています。いや、作っています、というほど、熱心ではないかもしれない。どちらかというと、句会を開いて、自分やいろんな人が俳句に触れているという、ことが好き。

私はたまたま、坪内稔典さんのところで俳句に出会って、気がついたら10年も経っていました。俳句が好き、かどうかはわからない。俳句自体のことを考えると様々な気分が生まれるので、もしかしたら好きじゃないのかもしれない。句会のことははっきりととても好きで、最近はそのことばかり考えている。句会においての、俳句の自由に扱われる雰囲気がとても好きだ。できるだけそういった好きでいられる方向で、俳句と向き合いたい。

揚句は『句集 リスボンの窓』(ふらんす堂・2024年刊)より。

季節折々の食卓に登場する様々な「ごはん」。
坪内稔典さんといえば『歳月やふっくらとこの豆ごはん』の句に代表されるように「豆ごはん」のイメージが強いが、この「とうもろこしごはん」も面白い。「豆ごはん」には歳月を想わせて、「とうもろこしごはん」には情愛があるという。
すべての生活は一見すると平凡であるが、実はただごとのなさを内包していて、それを、実はあるんだよ、と見せてくれる、「とうもろこしごはん」という「生活」であり「季語」。「季語」とは「生活」とは、実にただごとでないのだということを、坪内稔典さんの俳句をよむと思う。『たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ』なんて、それが顕著に表れている。

俳句をつくるなんて、本当ただごとではない。そんな俳句を世の中の多くの人は知っていて、その内のまた多くの人が実際に作ってしまう。面白いな、と思う。私が俳句と離れられなくなった理由は、きっと、面白いからなのだ。

(内橋可奈子)


【執筆者プロフィール】
内橋 可奈子(うちはし・かなこ)
1983年生まれ。兵庫県在住。「伊丹市俳句協会」会員。「窓の会」常連。



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