【秋の季語】衣被(きぬかつぎ)

【秋の季語=初秋(8月)】衣被

俳句で「芋」といえば、馬鈴薯でも薩摩藷のことでもなく、里芋のことを指す。

この「里芋」の小芋を、皮のまま蒸して、その皮を剥いて食べる秋の酒肴が「きぬかつぎ」である。

名称は、平安時代の女性の衣装「衣被ぎ」(きぬかづき)になぞらえたもの。後にき転じて「きぬかつぎ」と呼ばれるようになった。

今生のいまが倖せ衣被 鈴木真砂女

で有名な真砂女は、銀座の小料理屋「卯波」の店主であった。店では、実際に衣被が肴として提供されていていたという。


【衣被(上五)】
衣被モグラを剥くように剥きぬ 金原まさ子
衣被我のみ古りし夫婦箸 西村和子

【衣被(中七)】

【衣被(下五)】
雨夜きて仏の前のきぬかつぎ 大野林火
何となく独り身をかし衣被 山田みづえ
懐石の芋の葉にのり衣被  平林春子
をりをりはうつけに暮らし衣被 森澄雄
部屋中に川音を入れ衣被 福田甲子雄
今生のいまが倖せ衣被 鈴木真砂女
あら君は左ぎっちょね衣被 池田澄子
手の届くところに眼鏡きぬかつぎ 榎本好宏
悉く全集にあり衣被 田中裕明
くちびるにおしこまれけり衣被 田中裕明
座布団の綺麗な黄色衣被 酒井俊祐


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