【春の季語】鳥曇

【春の季語=仲春(3月)】鳥曇

秋に日本に渡ってきた「雁」や「鴨」や「白鳥」などの冬鳥が、北の繁殖地に帰っていく頃の曇った天候のこと。七十二候でいうと「玄鳥至」に、「鴻雁北」がつづく。

帰る雁にちがふ雲路のつばくらめこまかにこれや書ける玉章   西行

燕と交代するようにして北方に帰っていく鳥の代表は、かりがねである。新古今に〈古里に帰る雁がねさ夜ふけて 雲路にまよふ声聞こゆなり〉が見えるように、渡り鳥は敵に見つからないよう、あえて雲にまぎれるように帰っていく。

そのような様子を「鳥雲に入る」(長いのでしばしば略して「鳥雲に」)という季語で言い表す。


【鳥曇(上五)】
鳥曇ニツポニアニツポン生きゐて絶ゆ 三橋敏雄
鳥曇漂着物みな懐かしき 宇多喜代子
鳥曇り口シア寺院を出でし火夫 攝津幸彦

【鳥曇(中七)】

【鳥曇(下五)】
また職をさがさねばならず鳥ぐもり 安住敦
供花さげて母が遅るる鳥曇 古賀まり子
気休めにひもどく一書鳥曇 宇多喜代子 
アイロンは汽船のかたち鳥曇 角谷昌子
嚙み合はぬ鞄のチャック鳥曇 山田牧


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】


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