セクト・ポクリットでは2021年1月より、「コンゲツノハイク」をはじめました。前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。今月は、29結社にご参加いただきました!ありがとうございます。来月分(3月31日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。参加は無料です。
コンゲツノハイク 2021年3月
(2021年2月刊行分)
今月の参加結社(29)=「秋草」「稲」「海」「閏」「運河」「海原」「銀漢」「櫟」「雲の峰」「群青」「香雨」「澤」「秋麗」「青山」「鷹」「たかんな」「滝」「橘」「田」「天穹」「童子」「都市」「牧」「松の花」「南風」「ひろそ火」「街」「雪華」「若竹」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
ゆつくりと氷の上をこほる水 山口昭男
鳰小暗き水を食みこぼす 対中いずみ
不機嫌なスケート場のココアかな 水上ゆめ
しっとりと大きく割れて雪達磨 野名紅里
恋猫が三面鏡を覗きけり 加藤綾那
元日の糸くづふはと日溜へ 三輪小春
ストーブの点火のにほひねぢれ来る 西山みほ
「稲」(主宰=山田真砂年)【2021年1月創刊】
冬の蝶野に断層といふ軋み 沼田布美
海荒れの舟屋の魚籠に青蜜柑 上田信隆
コミュニティバス折り返しまた冬ざれに 滝代文平
枯葉踏む音を光に溶かしつつ 小見戸実
日蓮に法難木守柿真つ赤 大坪正美
風の音の真中に立ちて大根引く 中村かりん
熟柿吸ふ口の淫らを肯へり 槍田良枝
「海」(主宰=高橋悦男)【1983年創刊・東京都世田谷区】
てのひらに広げても見せ新米売る 高橋悦男
返り花言ひ訳ほどの花つけて 日下野仁美
浮くたびに遠ざかりゆくかいつぶり 福原千枝子
金継の大皿を出す年用意 宗像惠子
七五三帰りはスニーカー履きて 野島晴江
さよならの幾たびありし冬銀河 田中吉治
年用意机上整理が終りけり 菊池茂樹
「閏」(代表=守屋明俊)【2021年2月創刊・東京都国分寺市】
押入れのジュラ紀辺りに毛布あり 守屋明俊
落葉焚いまたけなはのにほひかな 本多遊子
風に乗る欅落葉に一瞬の蝶 平野豊雄
窓拭きやあつと驚く冬の蠅 金子かほる
そこに木のあれば啄木鳥来てをりぬ 菅原淑子
冬薔薇の火を秘め秞子全句集 森尻禮子
垣を飛ぶ豆の気魄や鬼やらひ 小林ゆきお
「運河」(主宰=茨木和生)【1956年創刊・奈良県生駒郡】
犂のみ残す牛小屋注連飾る 田邉富子
夜の火事風向き変り火が見ゆる 田和三生子
開戦日軍鳩軍馬慰霊の人 塩見蛙子
小いとゞが祖国の春をかけめぐる 谷口智行
「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
晴れた日の鯨の余暇の過ごし方 小松敦
石棺に少年の骨つづれさせ 鳥山由貴子
蜘蛛の巣の向うにドローン天高し 篠田悦子
素ぴん勝負コスモスの道の駅 小泉敬紀
曼珠沙華死ぬ時も弱音吐くだろう 峠谷清広
あたりまえを無くした年を去年と言おう 立川真理
良夜かな背中に文字を書く遊び 木村リュウジ
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
千年のこの底冷を生き給ふ 伊藤伊那男
祝詞から佳き名こぼれて七五三 深津 博
茶の花の明き鳥獣戯画の寺 三代川次郎
畦といふ箍ゆるびたる冬田かな 杉阪大和
冬ざれや即身仏の声を聞き 森崎森平
吹晴れて関八州の神迎 唐沢静男
菊模様はがしつつ食む河豚刺身 山元正規
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
冬あたたかや患者にもバーコード 江崎紀和子
通学の生徒は歩荷寒波急 櫛部天思
雁渡しほどけば匂ふ香袋 杉山望
閉店か開店前か初しぐれ 井門忠士
墓標めくカルスト台地冬に入る 和泉厚子
霙るるや銀座を名乗るシャッター街 種谷良二
小六月静脈さぐる医師若し 夏目たかし
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
くつさめの余韻さなかに又一つ 朝妻 力
失せ物を失せたるままにしてうらら 浅川彳亍
南座へ路考茶色の冬羽織 杉浦正夫
湯気の立つごとき曾孫の初写真 高野清風
己が影を短くしやがむ寒さかな 長岡静子
膝に来る児へ飛切りの初笑顔 中川晴美
かすかなる人語を蔵し山眠る 西田 洋
「群青」(代表=佐藤郁良・櫂未知子)【2013年創刊・東京】
水槽をよこぎり河豚を喰ふ部屋へ 筏井遙
絶えずかいつぶりぶつかる杭一つ 岩田奎
夕月にかしづく星や狸汁 伊藤素広
冬の日やおとなひを待つ壺の花 笠原みわ子
白昼を禽乾きをる氷かな 塩崎達也
このわたこのこうたかたのひと日了ふ 島季子
神の手が囃してをりぬ亥の子突 島木翠
「香雨」(主宰=片山由美子)【2019年創刊・東京都世田谷区】
かりがねや誰も住まざる家の鍵 佐藤博美
ゆらゆらと天平の塔水ぬるむ 田中春生
上げ潮の匂ひたちたる雨水かな 田口紅子
月の湾尾灯の列に縁取られ 髙瀬桜
秋ざくら人に触れむと揺れはじむ 馬場公江
咲くといふより現るる返り花 菰田晶
芽の出づるまで苗札の墓標めき 伊藤仁美
「澤」(主宰=小澤實)
本棚の前に積む本春を待つ 小澤 實
クルーズ船来て春が来て夏が来て 遊菜
マンモグラフィ冷ゆ挙手の吾を挟みこみ 井上雅惠
コンビニのネクタイは黒鰯雲 根岸哲也
分割画面の一人フリーズ咳の途中 林 雅樹
土間に黒板「おかえりみんないねかりです」 早崎直子
駐車場に光り「空」の字冬ざるる 荒井さくら
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
初夢に朝臣泣かせてしまひけり 藤田直子
鋭き風に毎夜彫らるる寒椿 小寺みほ子
カトレアや部屋のどこかに盗聴器 黒澤麻生子
天気図のニューヨークは晴レノンの忌 井上青軸
ジョーカーに弄ばるる凍夜かな 藤井南帆
映像の不意に固まる師走かな 堀米義嗣
煤逃のゴルフ仲間や夫主犯 さいとう樹
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
肩書の名誉の二文字老の春 山崎ひさを
わかさぎの跳ねて先端機器めける しなだしん
日を拒む深き渓谷岩魚釣る 井越芳子
漕ぎ入れて菱の実採りとなりにけり 山本洋子
秋冷や鍼灸院に星座表 神戸美沙子
養生テープ斜交ひに貼り台風裡 佐藤敏枝
原爆忌鐘鳴る八時十五分 村崎セツ子
「鷹」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
終りなく雪こみあげる夜空かな 小川軽舟
一月に始まる虚子の季寄せかな 山本良明
影連れ立つ相談室の寒灯に 川原風人
阿夫利嶺の竜神に汲む寒の水 大石香代子
部屋にゐて世界見通す寒さかな 高柳克弘
越屋根の垂氷に山の朝日かな 宮木登美江
文化祭張りぼて焼べて了りけり 宮本素子
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
病む母と対話の刻よ日向ぼこ 滝沢鷹太郎
若きらのほどに語らずちやんちやんこ 髙村龍彦
満目の枯れは蟷螂にも及ぶ 馬場孤舟
初雪や埋もるるものを覚えおく 日下里四
大根洗ふ水の豊かな里に住み 小野寺和子
傷ふかき机に冬のはじまりぬ 難波政子
上空に鳶を置くのみ大雪原 吉田千嘉子
「滝」(主宰=成田一子)【1992年創刊・宮城県仙台市】
ハムうすきサンド春立つ日のサパー 成田一子
相寄るは惑星ふたつ柚子ふたつ 石母田星人
仰ぐゆりの木寒気背すぢを走る 遠藤玲子
白絵具のやうに緊張障子貼る 芳賀翅子
文旦も入れてヒト科の進化論 渡辺登美子
島裏の薪割るにほひ小六月 池添怜子
みちのくの落日白し寒雀 赤間 学
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
庭神楽面の鶏冠のてらてらと 横山泠子
豪華特大付録並んで冬ぬくし 佐怒賀由美子
大嚔癌の腰椎貫けり 藤原登
寒雀風に弾みて翔ちにけり 金子勝美
爪先に冬来てをりぬ昼の月 宮前良子
銀杏を焼けばぽくりと夕日落つ 板倉ひろみ
空堀の小さき木の橋木の実降る 五月女叡子
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
リムジンを追ひかけてゆく落葉かな 細川朱雀
子規のごともの食うてゐる夜長かな 清水余人
重ね持つ弁当の虚暮早し 間 恵子
沸きさうで沸かぬ湯の音毛糸編む 佐藤千恵子
冬雲を押しあげてゐる一家族 草子洗
たばこ吸ふまへを寒柝よぎりけり 上野犀行
年寄りにもう無関心秋の蜂 石川和生
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
恋争ひ忘れ大和の山眠る 佐々木建成
丹念に漆塗りをり雪降りをり 福田龍青
悪妻になり切つてみる女正月 山口美智
土手鍋をがんす訛で塗り上ぐる 籠田幸鳴
綿虫を毀さぬやうに吹きもどす 米田由美子
しら雲は夢の吹き出し山眠る 福井まさ子
命毛の弾む楽の字筆始 屋内修一
「童子」(主宰=辻桃子)【1987年創刊・東京都国立市】
酔ひしれて共小便に火取虫 古林富三郎
信さんと連れションするも漱石忌 西沢爽
燗酒に吾もふるさと捨てたるよ 梅田越前
きく婆の泥鰌すくひも敬老日 あべふみ江
アイシャドー濃き人連れて三の酉 膝舘すみえ
二の酉や波除さんにママと客 城野三四郎
預かりしオーバコートやどつしりと 大越マンネ
「都市」(主宰=中西夕紀)【2008年創刊・東京都町田市】
逢ひにゆく未踏の落葉踏むために 中西夕紀
名月や広場に人と人の距離 桜木七海
分けてゐる花へ墓域の秋の蜂 三森 梢
秋草に睡る仔牛の尾の動き 北杜 青
限りなく丸になりたる兎かな 吉川わる
生国はドイツ煮凝好きな子よ 星野佐紀
何事もなき曇り日の冬はじめ 本多 燐
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
風邪ぐすり乗せて弁当包みけり 平田華子
歳晩の鼻光らせて警察犬 帯谷麗加
冬麗や櫓の音低く漕ぎ出だす 上田和子
新院の嬰の披露も報恩講 松岡波留美
流行歌の当て字奔放日脚のぶ 森あおい
寒紅を引くしつかりと立つために 五十理化
聖樹より零るる星を戻し遣る 岡原美智子
「ひろそ火」(主宰=木暮陶句郎)【2011年創刊・群馬県渋川市】
宅配のをとこに雪の匂ひかな 木暮陶句郞
砂肝の煮付の照りや年惜しむ 鈴木由里子
冬めくや遠き地名の無蓋貨車 中島弘子
抱き上ぐる猫に月夜のにほひかな ななさと紅緒
割烹着白し大根みずみずし 白井呂美
鰭酒や昔の夢の燃え盛る 松本余一
吐息ひとつ後はしづかな冬の森 木村佑
「牧」(代表=仲寒蟬)【2020年創刊】
さうそあれは春の風邪から始まつた 仲寒蟬
鯛焼の女体のやうに冷めてゆく 小泉瀬衣子
吊革をぎゆつと恐らく新社員 木村晋介
検眼の円の切れ目は雪景色 大部哲也
ふらここの一人にひとりずつの父 石井府子
祖母の背の丸みのままのちゃんちゃんこ 深江久美子
白昼も隕石は降る石蕗の花 早川信之
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
それぞれの屋根それぞれに冬うらら 松尾隆信
コロナ禍の真只中の芭蕉の忌 松波美惠
冬夕日白樺の金降りしきる 福嶋慈代
ハロウィーン日本の鬼は泣き上戸 荒井寿一
芭蕉忌の峠に遇へり通り雨 佐藤公子
最後の葡萄むくどり一羽通ひ来て 松尾直美
晩年や枯れゆくものを慈しみ しかい良通
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
受験後の新京極を二往復 今井聖
亡き友に木椅子を空けて赤とんぼ 池田義弘
鴨集ふ岸カメラマン去つてより 寺沢かの
冬ぬくしマンモス展に糞石も 蜂谷一人
蟹の朱よ鮪の赤よ一人の夜 西生ゆかり
寒星や腋にかぼそき電子音 大井正志
朝の月産後疲れのやうな白 金丸和代
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
運慶の施す地肌冬の月 Fよしと
指触れし傷みそのまま雪うさぎ 高木宇大
滝凍てて無声映画の幕開く 小野恣流
五万米ほろ苦し老い先長かりし 小泉晃治
白鳥を咲かせて水の眠り初む 星出航太郎
大寒の漢語を浸す薬草湯 籬朱子
生ハムは皿に張りつき十二月 田口くらら
「若竹」(主宰=加古宗也)【1928年創刊・愛知県西尾市】
マンモスの骨めく破船冬ざるる 村上いちみ
陵の落葉の嵩や木地師村 田口風子
望郷のストーブの上芋茎煮る 荻野杏子
獅子岩の懐に居て冬銀河 高濱聡光
朽野や小さき音にも振り向いて 工藤弘子
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2021年3月31日
*対象は原則として2021年3月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2021年4月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【「コンゲツノハイク」のバックナンバー】
>>2021年2月の「コンゲツノハイク」(2021年1月刊行分)
>>2021年1月の「コンゲツノハイク」(2020年12月刊行分)
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