【秋の季語】鵙の贄

【秋の季語=三秋(8月〜10月)】鵙の贄

「可愛いふりしてあの子、わりとやるもんだね」と言われているモズの、早贄。捕らえた獲物を木の枝等に突き刺したり、木の枝股に挟む習性をもっているモズは、秋に初めての獲物を生け贄として奉げたという言い伝えから「モズのはやにえ」といわれています。

2019年5月、大阪市立大学と北海道大学の共同研究により、はやにえの消費が多かったオスほど繁殖期の歌の質が高まり、つがい相手を獲得しやすくなる事が明らかになりました。これは、モズのオスのはやにえが「配偶者獲得で重要な歌の魅力を高める栄養食」として機能していることを示しているそうです。


【鵙の贄(上五)】
鵙の贄太古のごとく夕来ぬ 清原枴童
鵙の贄雨降りいでて後知らず 山口誓子
鵙の贄村の出役に明日はまた 百合山羽公
鵙の贄朝月はなほ細らむと 大峯あきら
鵙の贄風のひびきに諭し充つ 友岡子郷
鵙の贄万事休すといふ形 土井田晩聖
鵙の贄かくも光りて忘らるる 熊谷静石
鵙の贄ひとはひかりに瞑れり 辻美奈子
鵙の贄厠の窓にやや離れ 大崎紀夫
鵙の贄近江の月にかはきけり 城孝子
鵙の贄にはなりたないなりたない 稲畑廣太郎
鵙の贄より雨垂れのうまれけり 中田剛
鵙の贄山の雫を湛へけり しなだしん
鵙の贄音なき雨の大粒に 大西朋
鵙の贄希望ヶ丘の駅は谷 市川綿帽子
鵙の贄あをぞら雲におかさるる 山口優夢

【鵙の贄(中七)】
フライパン重なり鵙の贄増えた 金原まさ子

【鵙の贄(下五)】
大空のしぐれ匂ふや百舌の贄 渡辺水巴
歴史の記述はまずわが名より鵙の贄 寺山修司
土に生きる人頑なに鵙の贄 橋間石
目のあたりみどりのこれる鵙の贄 小原啄葉
言ふまいぞ長谷観音の鵙の贄 鈴木鷹夫
一痕は大空にあり鵙の贄 柿本多映
尾の先の乾びてゐたる鵙の贄 棚山波朗
風になほ命ある如鵙の贄 稲畑汀子
十字架のイエスもかくや鵙の贄 鷹羽狩行
容赦無き青空となり鵙の贄 矢島渚男
殉教のやうに舌出し鵙の贄 伊藤白潮
悪口は舌が言はせし鵙の贄 中原道夫
大空に乾くほかなき鵙の贄 柴田佐知子
絶叫の様に刺されて鵙の贄 宮田正和
そこにまだありをととひの鵙の贄 夏井いつき
まだ乾びちぢむ余地あり鵙の贄 寺島ただし
木の枝に泳ぐ形のもずのにえ 伊藤彩乃


→ 「百鳥」の例句はこちら(作成中)


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