【冬の季語】三の酉

【冬の季語=初冬(11)】三の酉

三回目の「酉の市」のこと。

酉の市は、年により2回のときと3回の時がある。

三の酉まである年は、「火事が多い、吉原に異変が起こる」と今もいわれているが、空気が乾燥しはじめて「火事」が起こりやすい時期であることに加えて、浅草では祭の帰りに隣接する新吉原に沈没してしまう男衆へのけん制であったともされる。永井荷風に〈その年の遊び納めや三の酉〉。能村登四郎に〈遠き日の火事ばなし明日三の酉〉。

11月の下旬ともなれば、夜はだいぶ冷え込む。鈴木真砂女の句に〈三の酉すぎしと燗を熱めにし〉。

絢爛な熊手市のラストシーンが終わっていくのは、淋しい。正岡子規の句に〈世の中も淋しくなりぬ三の酉〉。


【三の酉(上五)】
三の酉葉落ちつくせし宮うしろ 金尾梅の門
三の酉来てはさつさと帰るなり 石田郷子

【三の酉(中七)】
たかぐとあはれは三の酉の月 久保田万太郎

【三の酉(下五)】
一と二はしぐれて風の三の酉 百合山羽公
串焼きの葱の熱さよ三の酉 鷹羽狩行


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