【夏の季語】蟬時雨

【夏の季語=晩夏(7月)】蟬時雨

あまたの「」が一斉に鳴きたてる声を時雨の降る音に見立てた語。

蝉時雨子は担送車に追ひつけず 石橋秀野

は、山本健吉の妻であった石橋秀野が、絶命する前に詠んだ句。


【蟬時雨(上五)】
蝉時雨寺境を過ぐる余り風 大谷句佛
蝉時雨夫のしづかな眸にひたる 桂信子
蝉時雨棒のごとくに人眠り 清崎敏郎
蟬時雨一分の狂ひなきノギス 辻田克巳
せみしぐれ身体のなかの対の骨 大西泰世

【蟬時雨(中七)】
どこまでも蝉時雨とは包まれて 稲畑汀子
一切の外側の蝉時雨なり 奥坂まや
東京の蟬時雨とはうすつぺら 松本てふこ

【蟬時雨(下五)】
人力の森に這入るや蝉時雨  正岡子規
頼朝の虚子の鎌倉蝉時雨 星野高士
いづかたへ父は逝きしか蝉時雨 星野昌彦
湖の波立つほどの蟬しぐれ 桑島啓司
黒衣着てどこか破調の蝉時雨 櫂未知子

【ほかの季語と】
瀧音の息づきのひまや蝉時雨 芝不器男
あによめの日傘を借りてせみしぐれ 筑紫磐井 


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