連載・よみもの

【連載】「野崎海芋のたべる歳時記」 ブリニとタラマ


ブリニとタラマ

Blinis et tarama maison


年越しのシャンパーニュに合うおつまみ、もう一品。蕎麦粉でつくるパンケーキ「ブリニ」と、たらことクリームのペースト「タラマ」です。

パリに住んでいたころ、年末に老舗キャビア屋さんでこのブリニとタラマを買うのが楽しみでした。ブリニは本来の大きなサイズのものを扇型に切り分けたタイプもあれば、カナッペふうに小さなひと口サイズのものもあります。キャビアを添えて食べるためのものですが、専門店のロシア産キャビアはとても高価。キャビアにくらべるとだいぶお手頃なタラマは、キャビア同様に量り売りをしていて、お店オリジナルの美しい缶に詰めてくれるのにもうっとり贅沢な気分になれるのでした。

パリにはレバノンや北アフリカ、アジア系など、さまざまな移民の食文化が根づいていますが、そのもっとも古いものがロシアでしょう。パリのキャビア専門店は、ロシア革命期に亡命ロシア人によってもたらされた文化の名残を感じる場所です。

日本では鮮度のよいたらこが簡単に手に入るので、タラマも手軽に作れますね。わたしはサワークリームをベースに、ちょっとレモンを効かせて。蕎麦粉のブリニはホットプレートで、ひと口サイズに焼いています。

ふたたび安心して集うことのできる世になることを願って、今夜もシャンパーニュを開けたいと思います。

みなさまどうぞよいお年を。

去年今年貫く棒の如きもの  高浜虚子

季語【去年今年(こぞことし)】【年越】【鱈子】【年酒】

*本記事は野崎海芋さんのInstagram( @kaiunozaki )より、ご本人の許可を得て、転載させていただいております。本家インスタもぜひご覧ください。


【執筆者プロフィール】
野崎 海芋(のざき・かいう)
フランス家庭料理教室を主宰。 「澤」俳句会同人、小澤實に師事。平成20年澤新人賞受賞。平成29年第一句集『浮上』上梓。俳人協会会員。


  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#7
  2. 神保町に銀漢亭があったころ【第42回】黒岩徳将
  3. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第48回】 箕面と後藤夜半…
  4. 【#31】ヴィヴィアン・ウエストウッドとアーガイル柄の服
  5. 【#27】約48万字の本作りと体力
  6. 倉田有希の「写真と俳句チャレンジ」【第8回】俳句甲子園と写真と俳…
  7. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第24回】近江と森澄雄
  8. 神保町に銀漢亭があったころ【第113回】佐古田亮介

おすすめ記事

  1. 暗闇の眼玉濡さず泳ぐなり 鈴木六林男【季語=泳ぐ(夏)】
  2. ラグビーのジヤケツの色の敵味方 福井圭児【季語=ラグビー(冬)】
  3. 【夏の季語】黴(かび)/青黴 毛黴 麹黴 黴の宿 黴の香
  4. てつぺんにまたすくひ足す落葉焚 藺草慶子【季語=落葉焚(冬)】
  5. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#12
  6. 【夏の季語】ごきぶり
  7. 【春の季語】チューリップ
  8. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第53回】 秋篠寺と稲畑汀子
  9. 蜆汁神保町の灯が好きで 山崎祐子【季語=蜆汁(春)】
  10. 五十なほ待つ心あり髪洗ふ 大石悦子【季語=髪洗ふ(夏)】

Pickup記事

  1. 湖をこつんとのこし山眠る 松王かをり【季語=山眠る(冬)】 
  2. 香水の一滴づつにかくも減る 山口波津女【季語=香水(夏)】
  3. 俳句おじさん雑談系ポッドキャスト「ほぼ週刊青木堀切」【#1】
  4. コンビニの枇杷って輪郭だけ 原ゆき
  5. 【春の季語】浅蜊
  6. 詠みし句のそれぞれ蝶と化しにけり 久保田万太郎【季語=蝶(春)】
  7. 【秋の季語】野菊
  8. 【冬の季語】竜の玉(龍の玉)
  9. 太る妻よ派手な夏着は捨てちまへ ねじめ正也【季語=夏着(夏)】
  10. 蓮ほどの枯れぶりなくて男われ 能村登四郎【季語=枯蓮(冬)】
PAGE TOP