茅舎忌の猛暑ひきずり草田男忌
竹中宏
歳時記に遊んでいる句ともいえるが、こういう句を見るとやられた、と思う。季語が「三つ」入っている句といえば、〈目に青葉山ほととぎす初鰹〉(山口素堂)が有名だけれど、掲句の句のほうがウィットに富んでいる。
川端茅舎の命日は7月17日、そして草田男の命日は8月5日。しかも「草田男忌」の有名な句といえば、〈炎天こそすなはち永遠の草田男忌〉(鍵和田秞子)がある。その「炎天」が、句は茅舎の命日からずっと続いてきた、という気づきはなかなか真似できるものではないだろう。
「毎日暑いよね」という誰にでも思いつく言葉に、俳句的ウィットが加わると、こんな具合となる、というわけだ。
ちなみに両者のあいだには三つの俳人の命日がある。すなわち、秋櫻子忌(茅舎と同じ7月17日)、河童忌(7月24日)、不死男忌(7月25日)である。
ところで、忌日をふたつ入れた句というのは、他にどのくらいあるのだろう。あるにはあるだろうが、けっして多くはないはずだ。そう思うと、この句は「二忌日俳句」という難問パズルのような句であり、作者は、歳時記というゲームを遊びこなしているともいえる。
(堀切克洋)
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