Tシャツに曰くバナナの共和国
太田うさぎ
「バナナ・リパブリック」というカジュアル系のブランドがある。
だから実際には「共和国」は、英語で印字されているはずで、おそらく作者は「バナナの共和国って」と内心でツッコミを入れたのである、たぶん。
もっとも「バナナ共和国」という名称は、バナナを生産する中南米の国々への侮蔑でもあるから好ましくないという批判もあるようだ。
しかし、この作者の妄想のなかでは助詞の「の」が挟まったことで、絵本にでも出てきそうな、どこか浮世離れした「共和国」のようにもきこえる。言うまでもないことだが、バナナ原産国を揶揄するような意図は微塵もない。
作者の本領は、このような素材に対し、さらりと「曰く」などと大仰に言ってしまえるところ。「曰く」は、わたしたちが孔子など、漢文の訓読でまずは身に着ける言葉である。つまり、「Tシャツ」という最も日常的な日用品に、それを当て込むところが憎いのだ。
小さなものを大きく。それが太田うさぎのユーモアの秘密である。
太田うさぎのウィットに富んだ句の魅力については、別のところで、書く機会があったので、ぜひそちらも読んでみていただきたい。
こちらのリンク先に、拙稿(書評)があります。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
【書評】〈日常〉のなかのワンダーランド――太田うさぎ『また明日』(左右社、2020年)
『また明日』(2020)所収。(堀切克洋)
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】