什器全て鈍器に見えて冬籠今井聖【季語＝冬籠（冬）】

ハイクノミカタ

什器全て鈍器に見えて冬籠　今井聖【季語＝冬籠（冬）】

2024/1/12
ハイクノミカタ, 塚本武州
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什器全て鈍器に見えて冬籠

今井聖

１月１４日から大相撲初場所が東京・両国国技館で始まる。見どころは、横綱照ノ富士が復活優勝するか、大関霧島が横綱になるか、さらに関脇琴ノ若の大関昇進である。また、能登半島地震の影響を受けた富山県出身の元大関朝乃山が、被災者を元気づける成績を残せるかどうかも興味深いところである。

この大相撲初場所よりも１週間早い１月７日に「街俳句相撲」が、横浜・かながわ県民センターで開催された。「街俳句相撲」とは、俳誌「街」の主宰今井聖が考案した団体戦形式の句会のことである。すでに２０年以上続いている伝統的な行事で、「街」の会員のみならず、超結社の会員も参加し、リピーターが年々増えているそうだ。今回、私は初参加したのだが、来年もと思わせる不思議な引力のある句会だった。

そもそも「俳句相撲」とはどんな内容なのか、今年を例に説明すると、１０人でチームを作り、当日、チームの人数分の席題（今年は漢字一文字）が出され、チーム内で順番を決めて、各々の席題を読み込んだ俳句を作る（一人一句）。作った俳句は無記名且つチーム内でも非公開として提出され、参加者全員が席題ごとに順番に選句（良いと思う一句に投票）し、最終的に席題ごとに最高点句をとった作者のチームが勝ちとなる。簡単に言うと、自分の句が最高点を取れば勝ち、勝った人が多いチームが優勝ということである。「相撲」と言っても、１対１の個人戦ではなく、チーム対チームの団体戦であり、今年は１チーム１０人 x１０チーム＝１００人程の参加で、あっという間の4時間半だった。

什器全て鈍器に見えて冬籠　今井聖

掲句は、席題「器」のなかで最高得点をとった今井主宰の句である。日常使用する器具・家具が全て凶器のように見えて冬の家に籠っている、能登半島地震の被災者の視点を詠んだ句と解釈できる。今井主宰が、他者の俳句を歯に衣着せぬ物言いでバッサリと講評するのも、この「街俳句相撲」の名物のようだ。バッサリと切られた側も清々しく淑気な感じがするのは私だけではないだろう。

今年の「街俳句相撲」の結果は、予想外にも３チームが同点となり、チームキャプテンが代表してジャンケンした結果、我がチームが初優勝した。世の中は大変な一月となっているが、幸先の良いスタートとなった。

（塚本武州）

【執筆者プロフィール】
塚本武州（つかもと・ぶしゅう）
1969 年、立川市生まれ。書道家の父親が俳号「武州」を命名。茶道家の母親の影響で俳句を始める。2000年〜2006年までイギリス、フランス、2011年〜2020年までドイツ、シンガポール、台湾に駐在。帰国後、本格的に俳句を習い、２０２１年４月号より俳誌『ホトトギス』へ出句。現在、社会人学生として、京都芸術大学通信教育部文芸コース及び博物館学芸員課程を履修中。国立市在住。妻と白猫（ユキ）の３人暮らし。

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