カードキー旅寝の春の灯をともすトオイダイスケ【季語＝春の灯（春）】

ハイクノミカタ

カードキー旅寝の春の灯をともす　トオイダイスケ【季語＝春の灯（春）】　

2023/3/22
ハイクノミカタ, マンスリーゲスト
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カードキー旅寝の春の灯をともす)

トオイダイスケ
『天の川銀河発電所』

宿のカードキーとか透明の直方体がぶら下がっている鍵（白い字で宿の名前と部屋番号が書いてあります）とか、手にすると旅行に来たなあという感じがします。直方体のキーホルダーがついている鍵はどうしてあんなに振り回したくなるのか。実際には道中でいくらでも旅を感じることはできるのですが、宿の灯りの下で一日を振り返ると格別によい気分になってしまいます。

宿に着いたらもう休むだけでよいという安心感は言うまでもなく、その安心感があるから出歩いてコンビニでお酒とか買っちゃったりしますよね。旅先のコンビニってちょっと違って見えてワクワクするから旅って本当にすごい。得難い。

それで「灯をともす」のことなんですけど、鍵を挿すことで電気がつくという非日常的なトクベツ感もよろしいし、電気をつけたときの万能感というか、鍵を挿したことによってこの部屋の主が自分であることが確定した気持ちよさがあると思います。私が単純なだけかもしれないですが…。

ところで、旅館とかの鍵についている透明の直方体のやつ、あれをモチーフにしたカプセルトイがあるみたいです。大学の先輩が持っていて大変うらやましかった。

_{昭和ロマンシリーズ　ホテルキー　アクリルキーチェーン
https://brightlink.co.jp/capsultoy/page/9/}

「あの場所でまた逢えたら…」とのことで、なんか思ってたのと違いましたが、しかし透明な直方体というだけでときめくものがあります。このラインナップなら「ペンションModern」の701号室がいいな。角部屋っぽいからです。

旅に出たらどこもなんだかいい感じに見えるし、疲れにもふしぎと充実感がある。ひと息ついてカードキーを挿す、くつろぐためだけのほどよい灯りがともる。春の旅だと気持ちよさもひとしおと思います。〈カードキー旅寝の春の灯をともす〉。句の静けさは旅の心地よさ。旅行にいきたい、なんならとにかく宿に泊まりたいと思ってしまう一句です。

（山口遼也）

【執筆者プロフィール】
山口遼也（やまぐち・りょうや）
1998年生まれ。「秋草」所属。
第1回秋草よしきり賞、第14回石田波郷新人賞。
Twitter：@yakou_haiku
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2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜＝日下野由季→篠崎央子（2021年7月〜）、火曜＝鈴木牛後、水曜＝月野ぽぽな、木曜＝橋本直、金曜＝阪西敦子、土曜＝太田うさぎ、日曜＝小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓