ハイクノミカタ

でで虫の繰り出す肉に後れをとる 飯島晴子【季語=でで虫(夏)】

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でで虫の繰り出す肉に後れをとる)

飯島晴子
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 この句は昭和五九年の作で、晴子は六三歳。『八頭』に収められている。

 最初にこの句を読んだとき、「でで虫の繰り出す肉」というフレーズにどきどきした。あのヌルッとした灰色の塊の蠕動する動きが映像化して、圧倒されたのである。ただ、「後れをとる」という下五(この句は六音)が、分かったような、分からないようなで、はぐらかされたところがあった。けれど、でで虫の肉のリアル感が迫ってくる気分にもなったのである。

 その後、『自解100句選 飯島晴子集』(牧羊社)で、晴子の自解を読んだ。

 「でで虫を長い間見ていた。すると突然、殻から肉を出し始めた。その迅いこと。私の予測は置いてきぼりをくらって、眼前には、出せるだけの肉を出しきって、それを誇らしく立てたでで虫がいた。見事に一本とられたという感じであった。この感じをなんとか言葉にしようと、苦労して仕上げた句である」

 読んで納得。そうか、下五の「後れをとる」の上に「私が」を付けて解釈するのだ。つまり、私がでで虫の繰り出す肉に後れをとった、ということなのだ。

 晴子の自解を読んで、なるほどとは思ったが、自分の読みとは違うことがはっきりした。私は「でで虫の肉が」後れをとる、と読んでいたのである。繰り出す肉のあとに、後れをとった肉があり、その肉がまた繰り出す、というイメージ。だからそのリアル感に圧倒されたのだ。 それで、自解を読んだとき、ちょっとがっかりした。

松野苑子


【執筆者プロフィール】
松野苑子(まつの・そのこ)
1947年生まれ。1974年長男誕生の年より作句。「好日」「坂」「鷹」を経て、現在「」同人会長、俳人協会会員。第8回俳句朝日賞準賞受賞。第62回角川俳句賞受賞。句集に『誕生花』『真水(さみづ)』『遠き帆』


【松野苑子さんの最新句集『遠き船』はこちら↓】


2020年10月からスタートした「ハイクノミカタ」。【シーズン1】は、月曜=日下野由季→篠崎央子(2021年7月〜)、火曜=鈴木牛後、水曜=月野ぽぽな、木曜=橋本直、金曜=阪西敦子、土曜=太田うさぎ、日曜=小津夜景さんという布陣で毎日、お届けしてきた記録がこちらです↓



【2022年5月の火曜日☆沼尾將之のバックナンバー】

>>〔1〕田螺容れるほどに洗面器が古りし 加倉井秋を
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【2022年5月の水曜日☆木田智美のバックナンバー】

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【2022年4月の火曜日☆九堂夜想のバックナンバー】

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【2022年4月の水曜日☆大西朋のバックナンバー】

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>>〔2〕回廊をのむ回廊のアヴェ・マリア  豊口陽子
>>〔3〕田に人のゐるやすらぎに春の雲  宇佐美魚目
>>〔4〕鶯や米原の町濡れやすく     加藤喜代子

【2022年3月の火曜日☆松尾清隆のバックナンバー】

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>>〔2〕菜の花やはつとあかるき町はつれ  正岡子規
>>〔3〕春や昔十五万石の城下哉      正岡子規
>>〔4〕蛤の吐いたやうなる港かな     正岡子規
>>〔5〕おとつさんこんなに花がちつてるよ 正岡子規

【2022年3月の水曜日☆藤本智子のバックナンバー】

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>>〔2〕廃墟春日首なきイエス胴なき使徒 野見山朱鳥
>>〔3〕春天の塔上翼なき人等      野見山朱鳥
>>〔4〕春星や言葉の棘はぬけがたし   野見山朱鳥
>>〔5〕春愁は人なき都会魚なき海    野見山朱鳥

【2022年2月の火曜日☆永山智郎のバックナンバー】

>>〔1〕年玉受く何も握れぬ手でありしが  髙柳克弘
>>〔2〕復讐の馬乗りの僕嗤っていた    福田若之
>>〔3〕片蔭の死角から攻め落としけり   兒玉鈴音
>>〔4〕おそろしき一直線の彼方かな     畠山弘

【2022年2月の水曜日☆内村恭子のバックナンバー】

>>〔1〕琅玕や一月沼の横たはり      石田波郷
>>〔2〕ミシン台並びやすめり針供養    石田波郷
>>〔3〕ひざにゐて猫涅槃図に間に合はず  有馬朗人
>>〔4〕仕る手に笛もなし古雛      松本たかし

【2022年1月の火曜日☆菅敦のバックナンバー】

>>〔1〕賀の客の若きあぐらはよかりけり 能村登四郎
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>>〔3〕鉄瓶の音こそ佳けれ雪催      潮田幸司
>>〔4〕嗚呼これは温室独特の匂ひ      田口武

【2022年1月の水曜日☆吉田林檎のバックナンバー】

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【2021年12月の火曜日☆小滝肇のバックナンバー】

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