【冬の季語】十二月

【冬の季語=仲冬(12月)】十二月

「十二月」は、グレゴリオ暦で第12の月に当たる、1年の最終月。

31日間とは思えないほどに、あっといまに過ぎ去っていく。

日本では、旧暦12月を「師走」または「極月」と呼んできた。

具体的な日付として最も詠まれるのは、おそらく「十二月八日」(対米英開戦記念日)。


【十二月(上五)】
十二月豆腐全き姿にて 飯田龍太
十二月こちらの本をあちらへ積み 桂信子
十二月あのひと刺しに汽車で行く 穴井太
十二月うしろの正面山の神 成田千空
十二月真向きの船の鋭さも 友岡子郷
十二月鯉の下へと鯉沈み 鷹羽狩行
十二月木は立ったまま星に会う 酒井弘司
十二月肉屋に立ちて男の背 正木浩一
十二月おどろけば稚魚かがやけり 小澤實

【十二月(中七)】
あたたかき十二月なりひまにも馴れ 富安風生
うしろより足音十二月が来る 岩岡中正

【十二月(下五)】
それぞれの椅子に人あり十二月 高野素十
一堂の中のみ仏十二月 高野素十
火の色やけふにはじまる十二月 日野草城
めつむりてひげそられをり十二月 西東三鬼
カレンダー一遍上人十二月 星野立子
欲しきもの買ひて淋しき十二月 野見山ひふみ
主を頌むるをさなが歌や十二月 石塚友二
植木屋の妻の訃知りぬ十二月 沢木欣一
武蔵野は青空がよし十二月 細見綾子
馬小屋をざぶざぶ洗ふ十二月 本宮哲郎
遠い木が見えてくる夕十二月 能村登四郎
ひと山の蛤買つて十二月 鈴木真砂女
一弟子の離婚の沙汰も十二月 安住敦
それがまた間違いファクス十二月 小沢信男
駅弁の温みを膝に十二月 鷹羽狩行
ヴァイオリンになる樹と思ふ十二月 川口真理
海と空沖で繋がる十二月 岩淵喜代子
棚吊ればすぐ物が載り十二月 岡本差知子
いちまいの羽なきからだ十二月 恩田侑布子
玄関に道の来てゐる十二月 千葉皓史
ハンガーにハンガーかけて十二月 相子智恵
何やかや行列続く十二月 吉田哲二
手を引いて前のめりなる十二月 西山ゆりこ
読み終へて本に厚さや十二月 鈴木総史


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