冬の季語

【冬の季語】竜の玉(龍の玉)

【冬の季語=晩冬(1月)】竜の玉(龍の玉)

ジャノヒゲ(リュウノヒゲ)と呼ばれる植物の実。

垣根か庭の下草として植えられることが多い。

冬も深まるころ、あたりが枯れた中でコバルトブルーの実をひそかに実らせる。

一般には「蛇の髯の実」「竜の髯の実」とも呼ばれるが、俳句では凝縮して「竜の玉(龍の玉)」と称されることが多い。

「龍」は旧漢字で、現在の標準的な表記は、それをかんたんにした「竜」。


【竜の玉(上五)】
龍の玉深く蔵すといふことを 高浜虚子
龍の玉升(のぼ)さんと呼ぶ虚子のこゑ 飯田龍太
竜の玉男が拗ねて何とする 辻田克巳
竜の玉おもてざたにはできぬこと 岡田史乃
龍の玉地に喝采のあるごとし 大石悦子
龍の玉独りよがりは生き生きと 瀧澤宏司
龍の玉雌伏のいまとおもふべし 上野一孝
龍の玉影を離れてゐたりけり 山口昭男
龍の玉日月とどめおく處 佐々木六戈 
龍の玉火のごとき言葉一つ欲し 酒井弘司
龍の玉こころに遠く母のこと 石嶌岳
龍の玉小説よりも書簡よし 藤田哲史

【竜の玉(中七)】
名付親喪ひ龍の玉探す 細川加賀
旅にあると思へと龍の玉遺し 大石悦子

【竜の玉(下五)】
なまぬるき夕日をそこに龍の玉 岸田稚魚
生ひ立ちは誰も健やか龍の玉 村越化石
日当りの土いきいきと龍の玉 山田みづえ
生きものに眠るあはれや龍の玉 岡本眸
読み書きは無言に如かず竜の玉 宇多喜代子
年とつて優しくなりぬ龍の玉 大串章
まひるまも落ちる星あり竜の玉 塩野谷仁
をとこみな死に難かりき龍の玉 榎本好宏
終刊があって創刊龍の玉 川島由美子
こころねの深きところに龍の玉 中尾寿美子
むつかしきかほは犬にも竜の玉 広渡敬雄
太古にもかくなる眠り龍の玉 森宮保子
たれかれの声の籠れる龍の玉 井上弘美
志高くて去れり龍の玉 田中裕明
まひるまに夜空の色や龍の玉 浦川聡子
ひと言に血のめぐりだす竜の玉 津川絵理子
少女来て少年の去る龍の玉 田邉大学


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