【夏の季語=晩夏(7月)】蓮(はす・はちす)
多年生の水草で、根茎は泥中にあります。根茎の太い部分は「蓮根」と呼ばれて食用になり、種子も食べることができるます。「蓮根」は冬の季語、「蓮の実」は仲秋の季語、「蓮の浮葉」は初夏の季語です。
古くから鑑賞用・食用として東アジアで広く栽培されていました。汚い泥の中から清純な花を咲かせる蓮は極楽浄土に見立てられ、仏教と深い結びつきを持っています。
元々は実が蜂の巣に似ていることから「蜂巣(はちす)」と呼ばれ、のち「はす」に変化しました。仏教的なイメージを超え、その美しさが広く愛されています。
「蓮」も二音で「はす」と読むこともあれば、三音で「はちす」と読むこともあります。
【蓮(上五)】
白蓮に人形さはる夜明かな 蓼太
蓮の香や水を離るる茎二寸 蕪村
蓮の花咲くや淋しき駐車場 正岡子規
蓮の花とらんと向けし舳(へさき)かな 高野素十
夜の蓮に婚礼の部屋を開けはなつ 山口誓子
蓮池の真っ盛りなる他郷かな 永田耕衣
白蓮城シャツ彼ひぐがへり内灘へ 吉沢太穂
蓮ひらく空ゆくものに息あはせ 大石悦子
【蓮(中七)】
さはさはとはちすをゆする池の亀 鬼貫
くつがへる蓮の葉水を打ちすくひ 松本たかし
白服の少女は蓮の風の中 野澤節子
手にもてば手の蓮に来る夕かな 河原枇杷男
黄金の蓮へ帰る野球かな 摂津幸彦
ひらききる蓮(はもす)や未来都市に住む 山岸冬草
一穴にて大鬼蓮の腐りそむ 中村和弘
【蓮(下五)】
鯉鮒のこの世の池や蓮の花 許六
ほのぼのと舟押し出すや蓮の中 夏目漱石
みちのくの星に濡れつつ蓮咲きぬ 宇田零雨
利根川のふるきみなとの蓮かな 水原秋櫻子
遠き世の如く遠くに蓮の華 山口誓子
足許の闇に音たて池の蓮 桂信子