
【第6回】
草城・誓子の新年詠
先週に引き続いて、まだ正月気分である。百年前の新年詠について、角川書店の現代俳句大系 第一巻から今週は日野草城「青芝」、山口誓子「凍港」の新年詠を取り上げてみたい。
読み倦めば妻の弾初きこえけり 草城
元日やホテルの弓場は的を置かず 誓子
草城の句は、新年の家中の景がみえるようである。読初をしていた作者が少し倦んできたところに、別室から妻の弾く琴の音が聞こえてきた。一句の中に作者の心持の移ろいがあり、清冽な琴の音に、新年の新鮮な感動を得た作者の感動や妻を思う気持ちが感じられる。掲句は事物の客観写生ではなく、作者の心理に重きが置かれている句であるといえよう。
対照的に誓子の句は、元日のホテルにおける一場面を客観的かつ即物的に写生している(ホテルに弓場があるのが百年前ということなのでしょう)。的のない弓場の様子は、何もない壁が広がっているのみであり、この非日常感、リセットされる感じは、まさに元日そのものの景であろう。近代的な光景の写生から、俳句としての抒情を引き出す誓子俳句の面目躍如といった句である。
それにしても現代俳句大系 第一巻の充実ぶり、おそるべしである。
(庄田ひろふみ)
【執筆者プロフィール】
庄田 ひろふみ(しょうだ・ひろふみ)
昭和51年生、平成11年より天為同人
令和7年 第一句集「聖河」上梓
