
【読者参加型】
コンゲツノハイクを読む
【2026年2月分】
月末の恒例行事!「コンゲツノハイク」から推しの1句を選んで200字評を投稿できる読者参加型コーナーです。今月は8名の皆様にご参加いただきました。ありがとうございます!
竹箒かんとたふれて山粧ふ
崎原柚
「南風」
2026年2月号より
山寺か山の神社か。竹箒の倒れた気配が、山の装いを呼び出している。人の営みと自然の変化が、接続されている感覚。かんと、という音の乾きに記憶のなかの山の秋が立ち上がる。掃き終えたあとの沈黙、風も止んだような間。そこに山の色づきが静かに満ちてくる。読んだ瞬間に景が広がり出す気持ちの良い一句。
(押見げばげば)
赤き実を小鳥零せり白秋忌
玉木郁夫
「秋麗」
2026年1月号より
北原白秋といえば、私には短歌「君かへす朝の舗石さくさくと雪よ林檎の香のごとくふれ」が思い浮かぶ。この歌は道ならぬ恋の相手を家に返す時の歌といわれている。この歌の作者の忌日と取り合わせた距離感を好ましく思った。「赤き」「実」「小鳥」単語が良い。「零せり」は、嘴から柔らかさのある実が落ちたと捉えた。「り」の切れが良い。白秋は明治に生まれ昭和17年に亡くなったが、その間に複数回結婚している。そのことにも思いを馳せた。
(弦石マキ/「蒼海」)
凩や螺子の頭に十と一
大嶋康弘
「銀化」
2026年2月号より
捩子の最初はマイナスのねじ頭だったが、「ねじ」の溝が潰れる・ドライバーが滑るなどの理由で、プラスができた。このねじ頭を、十(じゅう)と一(いち)としたのが秀逸。海外では、プラスネジのことを「フィリップス」、マイナスネジのことを「フラット」と呼ぶらしい。JIS規格では、ねじ回しと呼ぶドライバー。因みに、プラスドライバーで、一番使うのは「No.2」。マイナスドライバーは「刃先の幅」で表され、5.5mmが家具組み立てや家電修理など一般用とのこと。
(野島正則/「青垣」「平」「noi」)
水平は水のやすらぎ冬に入る
中塚健太
「銀化」
2026年2月号より
小六月のような、初冬の暖かい一日を想像。凪いで波のない湖の黙を「水のやすらぎ」とみたところに、発見が。
また冬の水であればそれは「やすらぎ」と同時に平和でのっぺらぼうな、平面になっても酷く冷たい、恐らくは全てを拒絶するような闇色であり鏡面であろうかと。左様な鏡も鏡であるなら空をゆったりと流れる雲をも、映しているかもしれず。
そう思うと「冬に入る」がよく効いて凪いだ水の美しさと併せて、その裏のなんとも言えぬ冷たい水の抱える深さ、おそろしさをも見せてくれる素敵な句と、選ばせていただきました。
(haruwo/「麒麟」)
赤い羽根付けて人間らしくなる
須田としお
「樺の芽」
第55巻第2号より
赤い羽根とは募金をすると付けてもらえるあの赤い羽根ですよね。
人間らしくなるとは良いことをしましたよとアピールできるからであろうか。
電車、バスに乗って優先席に座ると席を譲らなくてはならないので座らない人が多い。
本当に譲り合いの気持ちがある人は赤い羽根なんか関係ないのでは?ジャカルタで生活していてバスに乗ることがよくあるが、宗教的に年長者を敬うという教えのせいか優先席じゃなくてもごく普通に席を譲られたことが何度もあります。
妻はかなり年下なのですが、妻の病院に付き添っていった帰りのバスで具合の悪い妻ではなく私が席を譲られて申し訳なく座ったこともありました。
譲ってくれた若者は赤い羽根なんか欲しいとは思っていないのでは、と思いました。
(慢鱚/「俳句大学」)
一日を日記にしまふ室の花
池田宏陸
「鷹」
2026年2月号より
わたしはかれこれ20年ほど毎日日記を書いている。日記を句材にした俳句もときどき作るが、「一日を日記にしまふ」というシンプルで納得できる表現はいままで思いつかなかった。この句はすごいと思う。季語「室の花」のささやかさ、謙虚さがまた良い。取り立ててなにかあった一日ではないけれど、日記に書いてその日を日記に収納することで、人生が積み重なっていくような、静かな満足感が得られる。日記は友だちのような存在なのだろうと思う。
(千野千佳/「蒼海」)
ドアノブをまはせば草の枯るる音
水谷由美子
「青山」
2026年1月号より
枯草の音ではなくて「草の枯るる音」が素敵です。「ドアノブ」のきしむ音というよりも、ドアを開けようとすると、季節が、時間や空間が、変容しつつある感覚に包まれるのです。枯れることは悲しいことではありません。草が枯れてゆく音は、「音」と書いてありますが、柔らかな感覚です。音の感触、音の色、音を聞いて揺蕩う気持ち、移ろいつつある季節の気配を感じます。そこにいる私も移ろいつつあります。日常の中の物や人や自然が柔らかく繋がりあっている感覚、共に在る安心感に包まれます。
(小松敦/「海原」)
自転車に乗せれば乾く水着の子
千野千佳
「蒼海」
30号より
上五・中七はいたって普通の景。
「乾く」とあるので何が?と軽い疑問が湧いたところで、一瞬「何かのモノ」であろうと脳みそが勝手に動く。
だが、直後の下五「水着の子」に、え?と驚き、即座にママチャリに備え付けられたチャイルドシートに乗った「水着の子」が見えて来るのだ。水着を着たままで自転車に乗る、という気軽さ。近隣の通い慣れたプール、自転車までの移動の親子の様子、自転車に乗っている間の風、気温、日射しまでが生き生きと読者を捉える。
日常の一コマを見事に俳句に仕立てる千野氏ならではの句と思う。万が一、自転車をママチャリと表現してしまったら一気に甘い句になる、そこをきちんと抑えた一句でもある。
(卯月紫乃/「南風」)

【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2026年2月28日
*対象は原則として2026年2月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2026年3月5日ごろ
◆投稿先 以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
