セクト・ポクリットでは2021年1月より、「コンゲツノハイク」をはじめました。前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナーです。今月は、30結社にご参加いただきました。ご協力ありがとうございます。
このページの句のなかから、推しの一句を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」は、9月20日締切です。どなたでもご参加いただけますので、詳しくはリンク先をご覧ください。来月分のコンゲツノハイク(9月30日締切)については、こちらのフォームからご投稿ください。
コンゲツノハイク 2022年9月
(2022年8月刊行分)
今月の参加結社(31)=「秋草」「閏」「炎環」「火星」「かつらぎ」「銀化」「銀漢」「雲の峰」「櫟」「磁石」「秋麗」「青山」「鷹」「たかんな」「滝」「橘」「田」「天穹」「都市」「南風」「鳰の子」「濃美」「ひろそ火」「ふよう」「ペガサス」「ホトトギス」「街」「松の花」「森の座」「雪華」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2022年9月号(通巻153号)>
上の空とは白百合の花の向き 山口昭男
蜘蛛の子のさ走る宇宙図鑑かな 山口遼也
地球儀の傾きほどの籐寝椅子 水上ゆめ
引越を蠅虎と相談す 竹中佑斗
蚤とおもひゐる間に二三跳ねてをり 渡辺一二三
真二つに千切る食パン仏桑花 野名紅里
矢印の吸ひ込まれゆく茂かな 桑山文子
「閏」(代表=守屋明俊)【2021年2月創刊・東京都国分寺市】
<2022年8・9月号(通巻10号)>
羽化できず蟬とも呼べず道半ば 守屋明俊
晴天やゼリーにしたき五月の風 髙橋満利子
祝福の楽隊みたい風鈴屋 中代曜子
鳥雲に入るノーモアノーモアと 寺田幸子
目刺喰ふ俺の生き死に与太が決め 金子 学
不死男忌や缶切要らぬ缶ばかり 森尻禮子
短めにカットお願ひ夕薄暑 金田知子
「炎環」(主宰=石寒太)【1989年創刊・埼玉県志木市】
<2022年8月号(通巻506号)>
楸邨忌来るよ葭切高鳴くよ 石寒太
銀笛のロングトーンや夏の山 吉川久子
青葉道杖ごとの母抱きあげ 鈴木芳芳
追悼に始まる句会夕薄暑 丑山霞外
息止めて開く封書や新樹光 武知眞美
年収のグラフ卯の花腐しかな 岡島理子
何度でも少女に戻る夏の川 せきみちこ
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2022年8月号(通巻991号)>
怖ろしく尖る香水瓶の蓋 山尾玉藻
蛍にささやき声の残りたる 山田美恵子
側転を繰りだす腕緑さす 蘭定かず子
羽抜鶏ゐて睦まじき老いふたり 湯谷良
ガード下のドラッグストア昭和の日 小林成子
草いきれ押し分けゆきし白脚絆 五島節子
おほかたは妻の言ひなり豆ごはん 森好太郎
「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
<2022年8月号(通巻1112号)>
余技と呼ぶもの吾にあらず傘雨の忌 森田純一郎
たんぽぽの絮飛んで行く未来かな 平田冬か
万緑裡投入堂はプラモデル 村手圭子
ウクライナ国旗に染めし彩卵 前田野生子
春愁や出かけたくなく出かけたく 広田祝世
校長室筍堀りの鍬を置く 安藤悠木
寄せたがる子に風船は逃げたがる 迫田斗未子
「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2022年9月号(通巻288号)>
紫陽花や逮夜を雲の混み合へる 峯尾文世
客去りて鮨桶洗ふ遠囃子 下村志津子
道をしへ出過ぎた真似をするでない 小林英昭
君の句のなくて七月号とどく 榊原栄作
人間の上に蚊闇のヒエラルキー 角葉づき
風死すや止まれの文字の伸びきりぬ 鹿田珠央
汗の玉ほうれい線に乗り換へて 新井竜才
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2022年8月号(通巻139号)>
白樺の倒れながらもなほ芽吹く 伊藤伊那男
男らの上を下への鰹基地 多田美記
一皿に昭和の仕上げパセリかな 本庄康代
口々に母似と言はれ絽の喪服 三溝恵子
片足を補陀落に置く紀伊の虹 川島 紬
篝火に染まる金襴薪能 西田鏡子
氷菓舐め海辺まで後もう少し 梶山かおり
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2022年8月号(通巻374号)>
元寇の舞台の島の夏始 住田うしほ
海猫や体に残る船の揺れ 春名あけみ
柿咲くやはらから順もなく逝きて 今村雅史
昼と夜に楽日を惜しむ夏芝居 斎藤摂子
山国のかげりやすさや栗の花 越智千代子
飴鷺のV字隊列風涼し 松本葉子
梅雨に入る朝より流すオレグァッパ 布谷仁美
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2022年8月号(通巻347号)>
葉桜や陶土投げつけ叩きつけ 江崎紀和子
はつたりの効かぬ齢や春の雷 杉山望
ストローの色は水色パリー祭 田邨雅美
筍を掘る連休の一日目 藤田美和子
鰻屋に敗戦投手なりし子と 福岡美智子
心太押しては今日の古びゆく 小原千秋
薔薇といふ文字の重たし眠りたし 近藤幽慶
「磁石」(主宰=依田善朗)【2021年1月創刊・埼玉県蓮田市】
<2022年7・8月号(通巻10号)>
いくさぞ止まぬ暗渠に呑まれ花筏 依田善朗
ふるへをる隅の仔猫をもらひたり 角谷昌子
毒舌をやはらかく受け蕨餅 長澤寛一
子離れや湯にほどけたる桜漬 寺澤佐和子
永き日の新聞読まぬまま置かれ 黒澤麻生子
どの子にも小さき心臓桜咲く 寺澤始
ひと時も重なり合はぬ落花かな 山田牧
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2022年8月号(通巻143号)>
マリア像片手は南風にひらかれて 藤田直子
羽固く閉ぢ夏の日の千羽鶴 川本美佐子
不器用な男のやうにががんぼ来 田沢健次郎
開拓碑早苗一束供へあり 佐藤俊和
夏炉辺のかろき緑や雨を来て 川俣このみ
薔薇咲かせ声楽家の声水のごと 成相真理子
布教して光を得たり鑑真忌 安齋行夫
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
<2022年8月号(通巻477号)>
満開にして丈高き立葵 山崎ひさを
案山子から雲のごときがはみだせる しなだしん
野の家に野の鳥のゐて春の水 井越芳子
囀りに囀り答ふ神の森 合田睦子
鉛筆を削れば木の香あたたかし 飯田みよ子
風音に沢音すこし木五倍子咲く 南井俊輔
バード・デイ湖たひらかに富士裾野 押尾清美
「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2022年9月号>
突掛けに素の爪先や鴨足草 小川軽舟
屋根に這ふ南瓜が咲いて漁休み 羽村良宜
蜜柑咲く太平洋の照り翳り 矢野弓子
てんと虫飛んで地球の裏 伯剌西爾 小島月彦
八月は錆びてふくるる釘のごと 金子三津子
ずぶぬれのゴールデン街灯の涼し 近藤洋太
七曜を母と暮らせり雨蛙 鎌田ひとみ
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
<2022年8月号(通巻356号)>
開けられて車炎暑の息を吐く 吉田千嘉子
草笛や放課後ありき友ありき 鈴木興治
ラムネ抜きたやすく孫を喜ばす 北村貞美
初夏や琥珀に眠る虫の夢 岩村多加雄
さらさらと米研ぐ音や夏立ちぬ 宝美佐子
田の面にまだある濁り夕薄暑 高田栄子
咲く色を待たずに草を引きにけり 類家直子
「滝」(主宰=成田一子)【1992年創刊・宮城県仙台市】
<2022年8月号(通巻367号)>
産卵のしづけさに似て百合ひらく 成田一子
黄泉未来現世夕焼アミノ酸 石母田星人
迅雷のローリエの香を焦しけり 木下あきら
この街の荒き夕焼ゴーヤに水 谷口加代
涼風の行方ブラックホールかも 峠三枝子
蒸しタオル外せば氷雨響みけり 阿部華山
竹細工の作品は「海」半夏生 小林邦子
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2022年8月号(通巻536号)>
等身の地蔵と語る薄暑かな 田島良生
絹買ひの崩れ屋敷や桐の花 角達朗
バサと変はるデジタル時計走り梅雨 若林朝子
ぼすぼすとボールペン押す啄木忌 松井努
椎の樹の根元の匂ふ春の雷 原國郁子
社より見下ろす漁港島薄暑 花輪ゆき子
案内図山吹あかりあるところ 西野雅子
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2022年9月号(通巻234号)>
口丸く歌つてゐたる鯉のぼり 神戸美沙子
戦争が起こらぬやうに武具飾る 仲 栄司
山彦のすなほな美声風薫る 石川和生
海一枚かぶり浮輪に身を通す 草子洗
緑風に勢子の気合や牛角力 間 恵子
江ノ電に飛び出してくる薔薇の花 佐藤千恵子
肘と肘合はせ挨拶南風吹く 上野犀行
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2022年8月号(通巻294号)>
奈良町に柿の葉鮓の葉を重ぬ 屋内修一
晶子忌や露国兵士に母の会 佐々木建成
山百合に囲まれぽつんと一軒家 山口美智
よく動く指のサファイアメロン切る 野間しげる
手で千切るバケット固し麦の秋 籠田幸鳴
スケボーの少女風切る初夏の街 前田勝洋
浮人形浮けば浮いたで沈められ 田中国太郎
「都市」(主宰=中西夕紀)【2008年創刊・東京都町田市】
<2022年8月号(通巻88号)>
叩け叩け太鼓叩けよ森涼し 中西夕紀
すかんぽの紅ひとすぢの風がくる 城中 良
日暮まで用なき身なり花の風 三森 梢
疎開子の訪ね来りし花の寺 岩原真咲
花の巨樹その歳月の力瘤 川合岳童
読むでなく持ち歩く本蝶の昼 永井 詩
悪相の鴉となりて夏来る 秋澤夏斗
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2022年9月号(通巻946号)>
夏鶯いづれの王か眠りたる 桑原規之
青嵐縦走といふ二人連れ 星野早苗
青萩や気ままに締める母の帯 館ゑみ子
蟻が引く揚羽の羽根に風強し 太田美沙子
水槽に殻脱ぐ蝦も雨の夏至 若林哲哉
豆本を納めし小函夜の秋 ばんかおり
秋鯖の脂に光る箸の先 加藤 修
「鳰の子」(主宰=柴田多鶴子)【2011年創刊・大阪府高槻市】
<2022年8月・9月号(通巻55号)>
蚊を払ひ蚊を打つばかり無聊の手 柴田多鶴子
花が花押し上げ桜咲きみつる 師岡洋子
石蹴つただけの一日啄木忌 岩出くに男
飛火野の芝の耀き孕み鹿 政元京治
羊の毛刈る六甲のまろき風 太田健嗣
戦争の嵐の星にゐて花見 豊田貴子
ソーダ水ひと口残し羽田発つ 古曵伯雲
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2022年9月号(通巻162号)>
夏霧に入りて融けゆく五欲かな 渡辺純枝
早苗饗を終へて月下の欅かな 関谷恭子
打水の了ひは手桶ごと撒きぬ 恒川敬代
厚塗りのゴッホのタッチ麦嵐 中川富雄
巣つばめにおき場所ゆづる子等の靴 小鳥輝枝
田を植ゑて空の一日薄ぐもり 坪井克枝
深呼吸ひとつして逝く五月尽 遠藤加容子
「ひろそ火」(主宰=木暮陶句郎)【2011年創刊・群馬県渋川市】
<2022年8月号(通巻139号)>
蘆花夢二泊りし宿の籐寝椅子 木暮陶句郎
時の日やかつてはめてた腕時計 松本由美子
万緑やブナの木肌の艶めきぬ 安部じゅん
階段を踏み外すとき昼寝覚む 下境洋子
取り敢へず冷凍してしまへバナナ 小須賀正幸
飛魚の背に空の色海の色 木村佑
夏蝶や植ゑ替へられた花時計 小暮肇
「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2022年8月号(通巻90号)>
博多山笠桟敷番号あいうえお 千々和恵美子
足の砂足で落とせり大西日 安倍真理子
塗り下駄の塗りのひやりと星祭 貴田将子
頬杖のすとんと落ちて昼寝覚む 鍜治惠津子
本棚の本の匂へる戻り梅雨 白井しげ子
滝つぼの深さ男の子の胸あたり 諌山恵子
かなしみは真つ直ぐ受けて春の雷 坂井俊郎
「ペガサス」(代表=羽村美和子)【2018年創刊・千葉県千葉市】
<2022年8月号(通巻第14号)>
ほたるぶくろ懺悔室なら空けてある 羽村美和子
憲法改正鉄線の土入れ替へる 石井美髯
大花野埋めなくても消える骨 浅野文子
レッテルを貼られ途惑う冷奴 原田昌克
水饅頭母の忌日につく嘘は 伊藤左知子
ゆく春の火種のひとつ消さずおく 中村冬美
浮いて来い遊び上手の持ち時間 大川竜水
「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2022年9月号(通巻1509号)>
行春や邸の主は風となり 稲畑廣太郎
引力に抵抗したる落花かな 伊東法子
囀のくすぐつてゐる夢の端 山田佳乃
はひはひの子に春光の躓きぬ 能美顕之
プリズムとなりたる花瓶ヒヤシンス 藏本翔
海亀の涙に未来残しをり 杉森大介
薪能シテ方纏ふ陰と陽 譽田文香
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<2022年8月号>
向日葵や大縄跳びを出られぬ子 今井聖
残したるビールに鳶の影過ぎる 北大路翼
ギター弾く指の形のまま昼寝 笹沼千景
血糖値高し夏潮煌めいて 竹内宗一郎
蛭丸めガイドは話続けたる 千葉まどか
缶ビール遺品整理を終えし夜 西村小市
膝までのゲートルの子規夏の雲 蜂谷一人
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2022年8月号(通巻296号)>
ふらここをはなびらとほりぬけにけり 松尾隆信
マロニエ咲く雨脚細き神保町 渡辺絹江
曲りますとダンプカー言ふ夕薄暑 髙山睦子
新緑と深緑に森分かれたり 興梠隆
阿修羅像の腕六本の涼しさよ 森脇由美子
水筒を無くしただけのメーデーか 鈴木大輔
まんまんと闇に浸せる代田かな 小山五十三
「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2022年8月号>
きらめかんためにまた浮く春の鳰 横澤放川
食つちや寝の思考停滞梅雨兆す 奈良比佐子
大夕焼山の向こうは鬼のくに 北島大果
葛の花全きものは見つからず 沼田真知栖
雨上がる光に雛を納めけり 木村郁代
野を焼かれ近江ゆるりと暮れにけり 松村千鶴
誰よりも青大将が驚きて 栗原実季
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2022年9月号>
篁に星は孵らず夏の月 橋本喜夫
穢の國のいづれこの蟬だけ残る 青山酔鳴
すててこや電池の尻が錆びてゐる 鈴木牛後
文庫本閉ぢ蟻の死を確かむる 五十嵐秀彦
老ゆる墓洗へば水を眩しがる 井上絃
羅や肋に残る翅の痕 増田植歌
車窓いま無に塗り替へる白雨かな 三品吏紀
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2022年9月30日
*対象は原則として2022年9月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2022年10月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【「コンゲツノハイク」のバックナンバー】
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>>2021年9月の「コンゲツノハイク」(2021年8月刊行分)【34結社参加】
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