【秋の季語】葛の花

【秋の季語=初秋(8月)】葛の花

葛は、マメ科のツル植物で、日当たりのよい山野に育ち、初秋に赤紫色の花をつける。

秋の七草のひとつであり、万葉集には、葛を詠んだ歌が21首、収録されている。

真田葛延ふ夏野の繁くかく恋ひばまことわが命常ならめやも(巻十一・九八五番歌)

(ま葛ののびる夏野のように、しきりにこれほど恋うていたなら、本当に、私の命はどうかなってしまうのではないだろうか。)

繁殖力の強い葛のツルが、ここでは相手を思いつづける恋心の比喩となっているが、葛の葉は白っぽく、風に翻ってその白さが見え隠れすることから、「裏見草(うらみぐさ)」とも呼ばれた。当然のことながら、「恨み」とかけて歌が詠まれてきた経緯があり、

秋風の吹きうらがへす葛の葉のうらみてもなほうらめしきかな (古今・巻第十五・恋歌五 823)

などの歌が残されている。

季語としては「葛咲く」としても用いられることがある。


【葛の花(上五)】
葛の花むかしの恋は山河越え 鷹羽狩行
葛の花こぼれやすくて親匿され 飯島晴子
葛の花来るなと言つたではないか 飯島晴子
葛の花生者はこゑを嗄らしつつ 柿本多映
葛の花だんだら畑に寄せ来る  石井美智子
葛の花亀甲縛り食込める 寺澤一雄
葛の花鋭利な喫茶店に雨  宮本佳世乃
葛の花小さき車窓に顔二つ 北大路翼
葛の花このかさぶたはいつの傷 橋本小たか

【葛の花(中七)】

【葛の花(下五)】
山川や流れそめたる葛の花 高野素十
手を振ればわずか日当たる葛の花 林田紀音夫
人の身にかつと日当る葛の花 飯島晴子
乳房みな涙のかたち葛の花 中嶋透子
真青な竹にからみて葛の花  岩田由美


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