前月に刊行された俳句結社誌・同人誌の最新号から「(最大)7句」を推薦いただき、掲出するコーナー。全句から、未来の名句となるかもしれない「推しの一句」を選んでご鑑賞いただく読者参加型コーナー「コンゲツノハイクを読む」は、3月分のリリースが遅れてしまったために、4月分とまとめての応募ということにさせてください(4月30日締切)。ご投稿は、こちらのフォームから。
コンゲツノハイク 2024年4月
(2024年3月刊行分)今月の参加結社☞「秋草」「稲」「伊吹嶺」「炎環」「円虹」「海原」「火星」「かつらぎ」「樺の芽」「銀化」「銀漢」「櫟」「秋麗」「青山」「磁石」「蒼海」「鷹」「たかんな」「橘」「田」「天穹」「南風」「濃美」「ふよう」「ホトトギス」「街」「松の花」「森の座」「雪華」
「秋草」(主宰=山口昭男)【2010年創刊・兵庫県神戸市】
<2024年4月号(通巻172号)>
電流の流るる如く白魚汲む 山口昭男
蠟梅は疲れたやうに咲いてゐる 桑山文子
旧正の大きな栗鼠の頬袋 鬼頭孝幸
話すのをやめて落葉を見てゐたり 舘野まひろ
原稿の角揃へたる蜜柑かな 西江友里
いまわたしねむりにおちる薄氷 高橋真美
降る雪のかろきと思ふ港かな 村上瑠璃甫
「伊吹嶺」(主宰=河原地英武)【1998年1月創刊・愛知県名古屋市】
<2024年3月号(通巻309号)>
日脚伸ぶ砂の重みのうつせ貝 河原地英武
的逸れし矢は音もなく寒天へ 栗田やすし
冬の灯を低く引き寄せ皿絵付 久野和子
十二月八日や消せるボールペン 加藤剛司
舐めてとる指のささくれそぞろ寒 武田稜子
犬小屋の屋根に寝る猫小六月 野村和甚
雪蛍ひとりぼつちの掌に アワンきえ
「稲」(主宰=山田真砂年)【2021年1月創刊】
<2024年3月号(通巻21号)>
子の熱をおでこで測る文化の日 上田信隆
ただ老ゆる吾に勤労感謝の日 小見戸 実
掃除機の吸うてしまひし冬の蠅 滝代文平
遠火事のごとくにガザを想ひけり 高田 峰
小春日やはてなはてなと物忘れ 鎌倉秋廣
プランB一つ手前で降りて秋 戸上晶子
パンパンと洗たく物干す雁渡し 瀧本 萠
「炎環」(主宰=石寒太)【1989年創刊・埼玉県志木市】
<2024年3月号(通巻525号)>
能登の地震七十二時間生還す 石寒太
鎮魂のごとく雪舞ふ四日かな 大和田響子
震災のニュース冷たき靴磨く 榊はたはた
冬の燈や逝く夫の爪切り揃へ 丹間美智子
命まだあること不思議日向ぼこ 森戸柚斎
屠蘇祝ひはじめはいくさ知らざる子 竹内洋平
北風と小さな踏切を渡る 岡島理子
「円虹」(主宰=山田佳乃)【1995年創刊・兵庫県神戸市】
<令和6年4月号 第348号>
寒紅を一筆書き井でひく彼女 田村恵津子
ウィーンより届く調べや淑気満つ 福元成子
持つべきは句友と思ふ石蕗の花 市川武子
はぐれ来る雲が風花散らしゆく 花川和久
能登の地震いかにいかにと月冴ゆる 魚住富美子
独楽廻す子の手の器用見てをりぬ 長澤佳子
半衿の付け替へ終へて除夜の鐘 髙丸真理
「海原」(代表=安西篤)【2018年創刊・千葉県市川市】
<2024年3月号(第56号)>
老優の屈背の科白日短か 安西篤
水色の封書をひらく天の川 北村美都子
うつむくと地面が見える石蕗の花 小松敦
月天心地上散らかっています 芹沢愛子
冬ひでり極細ペンで刺す聖地 堀之内長一
小鳥来る広げたままの新聞紙 松岡早苗
さうですか不知火ですか僕達は 矢野二十四
「火星」(主宰=山尾玉藻)【1936年創刊・大阪府大阪市】
<2024年3月号(通巻1010号)>
海鼠嚙むあづま男をはかりかね 山尾玉藻
吊革の揺れに消えゆく冬の虹 大山文子
凍滝の無念さうなる歪みやう 山田美恵子
裸木の日うら日おもて緩びなし 坂口夫佐子
祖師像の前の百畳寒に入る 蘭定かず子
次の間も煌と点せる煤払 湯谷良
冬あたたか靴に履き口ひとつづつ 今澤淑子
「かつらぎ」(主宰=森田純一郎)【1929年創刊・兵庫県宝塚市】
<2024年3月号(通巻1131号)>
着ぶくれて足早に過ぐロケの町 森田純一郎
しぐれ寒うべなひつゝも翁忌へ 平田冬か
磐座にさつきの冬日もうあらず 村手圭子
通販で済ませるもあり年用意 吉川やよい
鳰の笛成層圏に届きさう 木村由希子
街道の貴賓室より雪蛍 森田教子
脚色に虚と実とあり日記果つ 菅原好隆
「樺の芽」(主宰=粥川青猿)【1967年創刊・北海道帯広市】
<第53巻第4号(通巻569号)>
如月の紙に指切る夜半の卓 粥川 青猿
野良猫の間合い保ちつ日向ぼこ 江波戸 明
燃え尽きて灰となりけりる寒茜 山田 倫一郎
欲深く冬満月へ手を伸ばす 三浦 斗久舟
着ぶくれのままに今更初期化とは 大沼 惠美子
土の香も春の香となる切通し 木幡 嘉子
大胆に呼び出してゐる恋の猫 小宮 富子
「銀化」(主宰=中原道夫)【1998年創刊・東京都港区】
<2024年4月号(通巻307号)>
断崖を落ちゆくは影青鷹 横田佐恵子
紙漉やいそがぬ水といそぐ水 橋本喜夫
一瞬の光年の旅大くさめ 大西主計
遺言は生のあとがき虎落笛 澤井博之
寒垢離の合掌ほどく剝ぐやうに 十見達也
初電話地震の安否になろうとは 髙埜健蔵
初買ひの財布は箱に仕舞ひをり 矢野紀子
「銀漢」(主宰=伊藤伊那男)【2011年創刊・東京都千代田区】
<2024年4月号(通巻158号)>
生きてゐる証海鼠を噛み切るも 伊藤伊那男
被災地へ毛糸編みませ千手仏 池田桐人
骨格をしかと見せをり冬の滝 本庄康代
若井汲む未だ明けやらぬ記紀の山 朽木 直
鰭酒の咄に尾鰭ありさうな 中島凌雲
海鼠腸を逃がしてばかり象牙箸 坪井研治
指先のその先筑波冬霞 大野田井蛙
「雲の峰」(主宰=朝妻力)【1989年創刊・2001年結社化・大阪府茨木市】
<2024年3月号(通算393号)>
松風や花びら餅の紅ほのと 中川 晴美
本堂に阿弥陀池を聞く師走 瀧下しげり
年越を夜勤の人と過ごしけり 谷野由紀子
初午やふるさと匂ふしもつかり 冨士原康子
団員として子も出向く出初式 浅川 悦子
楪を箸置きとして祝膳 宮田かず子
百歳の足を鍛ふる大晦日 入江 緑
「櫟」(主宰=江崎紀和子)【1993年創刊・愛媛県東温市】
<2024年3月号(通巻366号)>
髭面の教へ子に遇ひ蜜柑山 櫛部天思
洋梨は胎児のかたち胸に抱く 池川紀子
潜る鳰目鼻忘れず戻りけり 宍野宏治
千円札どれもくたびれ年の暮 室達朗
半分は分からぬ話ちやんちやんこ 平岡敏
白息を吐くだけ吐いて貝になろ 岡野晃子
茎よりも長き根を張り冬の草 中村晋
「磁石」(主宰=依田善朗)【2021年1月創刊・埼玉県蓮田市】
<2024年3・4月号(通巻20号)>
空青くあをくなるたび白鳥来 依田善朗
破芭蕉鳳凰は詩の中に棲み 篠崎央子
熨斗ほどのもの巻きたるも冬構 黒澤麻生子
石鹼の残る指輪や冬の朝 寺澤 始
天へ散り大地へ降つて初雀 角谷昌子
透きとほるまで立ち尽くす枯野かな 山田牧
綿虫は人を恋ふ虫ネットカフェ 飯田冬眞
「秋麗」(主宰=藤田直子)【2009年創刊・神奈川県川崎市】
<2024年3月号(通巻162号)>
浮き沈みする桟橋や鳥帰る 藤田直子
ヒト怖し冬眠などはしてをれぬ 田子慕古
梟と話す屋根裏部屋に来て 宝絵馬定
パルテノンは風の宮殿寒満月 東蕾
大凧の大地引つ張り行く力 市川和雄
鶴の声ひときは高き久女の忌 小林恵子
年明けの驚天動地ただ祈り 大脇久子
「青山」(主宰=しなだしん)【1982年創刊・神奈川県横浜市】
<2024年3月号(通巻496号)>
花あまた蕾あまたや福寿草 山崎ひさを
若かへで弓手きらきらひき絞り しなだしん
壺暗く置かるる窓に春の月 井越芳子
靴底の泥濘重し猟期来る 水谷由美子
古雛この世のことにかかはらず 坂東文子
東京の隣りの県の秋の色 ローバック恵子
戦場へ続くこの冬空の青 谷川理美子
「蒼海」(主宰=堀本裕樹)【2018年創刊・東京都新宿区】
<23号>
歯ブラシの毛のかがやきも台風圏 早田駒斗
秋風や石のトーガに石の傷 塚本櫻魚*
錆びるてふ鉄の時間を銀河濃し 山口ち加
林檎剥く刃先に泡の生まれけり すずきなずな
対岸へ移り住みたる秋の蝶 種田果歩
芋虫のふんばつて空見上げをり 河添美羽
税務署の大菊三本仕立てかな 加藤ナオミ
*「ギョ」は「れんが」ではなく「大」
「鷹俳句会」(主宰=小川軽舟)【1961年創刊・東京都千代田区】
<2024年4月号>
早春の寄港地の窓みな朝日 小川軽舟
動熱(どうねち)の如き怱忙(そうぼう)雪婆 砂金祐年
煤逃やめつきり減りしパチンコ屋 加賀東鷭
山籟強き在の朝や凝鮒 中島悦子
文机は正座の高さ初日記 半田貴子
木枯や計画都市に消失点 篠塚雅世
仔を喰ひし白熊蹠なめてをり 近藤洋太
「たかんな」(主宰=吉田千嘉子)【1993年創刊・青森県八戸市】
<2024年3月号(通巻375号)>
比喩暗喩追うて海鼠に辿り着く 草野力丸
おでん鍋昭和の歌のしみてをり 日下里四
猫舌の手に熱々の干菜汁 村田加寿子
仮縫の糸のまぶしき合格子 庄司紀野
雪吊や縄の遊びの勘どころ 岩村多加雄
初雪や花の溶けゆく絵蠟燭 五十嵐礼子
初雪の明るき嵩の朝かな 類家直子
「橘」(主宰=佐怒賀直美)【1978年創刊・埼玉県久喜市】
<2024年4月号>
傍らに赤子の寝息毛糸編む 吉田孝子
引きよする光の糸や冬すみれ 干野風来子
さはさはと触れ合ふ笹の淑気かな 原智子
ベランダの木椅子に予後の日向ぼこ 田中久美子
悴む手塗香にほぐす写経会 鈴木スイ子
転がせば転がる方へ雪まろげ 築井雅美
潮の香の中へ広ごる初灯 田島公樹
「田」(主宰=水田光雄)【2003年創刊・千葉県市川市】
<2024年4-5月号(通巻253号)>
ゆず三個浮かべ柚子湯と称しけり 真田えい子
手さぐりの余生生きをり竜の玉 清水余人
鉄塔の脚をくすぐる穭田よ 井上圭子
煤逃げの勝鬨橋を渡りけり 神戸美沙子
水槽の怒りし河豚と待たさるる 草子洗
揃へたるブーツ皺より折れにけり 笠原小百合
年の夜の小学校の灯りをり 平野山斗士
「天穹」(主宰=屋内修一)【1998年創刊・東京都渋谷区】
<2024年3月号(通巻313号)>
古日記日々に良きこと一つ記し 佐々木建成
左義長や被災募金の大き箱 山口美智
玄室へ冬日一条石舞台 籠田幸鳴
ご近所も心地よき音蒲団干す 前田勝洋
蓮枯れてのぼうの城を取り囲む 斉藤雅はる
スクラムのテトラポッドに冬怒濤 前橋竹之
山茶花のちるちる散りぬ散りしきぬ 福井まさ子
「南風」(主宰=村上鞆彦)【1933年創刊・東京都葛飾区】
<2024年4月号(通巻965号)>
夜をそよぐ蕪の一葉となりてゐる 若林哲哉
背に雪白鳥眠りより覚むる 岡原美智子
師の横に畏まりつつ初電車 岡辺明代
淀川を鷗と渡り初句会 土井常寛
葉の揺れて冬日の鳥になるところ 菅井香永
作らねば出てこぬ夕餉冬の鵯 市原みお
湯こぼせば畳が吸ひぬ寒椿 上田圭子
「濃美」(主宰=渡辺純枝)【2009年創刊・岐阜県岐阜市】
<2024年4月号(通巻181号)>
枯野来て紺地金泥の経一巻 渡辺純枝
はるかなるものへ二拍手年新た 石井雅之
皮手袋指の皺ごと脱ぎにけり 遠藤多寿子
新障子破る子も無く猫も居ず 林 玲子
冬蝶やひとり生まれてひとり死す 金石法子
短日を言うて余談の長電話 山田千恵子
冬晴や大丈夫と言ふ吾に言ふ 後藤五百合
「ふよう」(主宰=千々和恵美子)【2005年創刊・福岡県遠賀郡】
<2024年3月号(通巻109号)>
天空へ尽きぬ旋回鶴帰る 千々和恵美子
砂時計落つるあはひを日脚伸ぶ 齋藤禮子
土の声水の声聴き春告草 藤本真弓
雄鶏の声高らかに厄落し 藤井さわこ
白魚の光りに踊る四ツ手網 堺 久芳
春一番風にあふられ草野球 宮﨑賢治
熱燗をねだる銚子を振りながら 矢吹憲子
「ホトトギス」(主宰=稲畑廣太郎)【1897年創刊・東京都千代田区】
<2024年4月号(通巻1528 号)>
生き生きと枯れ木になつてゐる一樹 稲畑廣太郎
枯野横切る獣道人の道 酒井 湧水
熊もまた人に会いたくなき山路 涌羅由美
廃坑の二本煙突冬日和 蔵本翔
やはらかに師の墓包む冬日かな 荒川裕紀
冬帽子越しに優勝パレード来 塚本武州
海からの風クリスマスマーケット 岸田祐子
「街」(主宰=今井聖)【1996年創刊・神奈川県横浜市】
<2024年4月号>
模型屋の軽く大きな福袋 今井聖
ねんねこの赤子溶接されしごと 石川暘子
なんとなく怪しおでんの具のひとつ 小久保佳世子
限りなく薄き羊羹初明り 柴田千晶
書初の大腿骨のやうな一 藤尾ゆげ
寒鯉をみがきて水の流れをり 松野苑子
鬼の形相とは雪中の櫨紅葉 紅葉栄子
「松の花」(主宰=松尾隆信)【1998年創刊・神奈川県平塚市】
<2024年3月号(通巻315号)>
水鏡して枯菊に残る紅 松尾隆信
娘見送るひんがしの三つ星と 岸桃魚
遠火事を窓に見送る夜の電車 佐藤公子
空気入れ最後の一押し冬うらら 櫻井波穂
五ミリほどの児の心音や藪柑子 興梠隆
エッシャーの絵の如く群る千鳥かな 松尾清隆
冬日落つ膝抱くやうに泣くやうに 鈴木大輔
「森の座」(代表=横澤放川)【2017年創刊・東京都文京区】
<2024年3月号>
鷹いまし渡りしのちは太虚のみ 横澤放川
水鳥のまだ来ぬ沼や波の音 矢須恵由
よきことのあれと寒梅白尽す 石田経治
封筒に息吹き入るる一葉忌 黒田咲子
昏々と牧場や北風の底うなり 北杜駿
今ここに父の在りせば鯨鍋 篠田暘
泣けば父笑へば母似青木の実 橋原涼香
「雪華」(主宰=橋本喜夫)【1978年創刊・北海道旭川市】
<2024年4月号>
丸干しの潤目鰯の外れ顎 小山内杏
鉛筆を舐め大寒をやり過ごす 星出航太郎
酢海鼠こりつと前頭葉覚める 小泉晃治
地吹雪の街に死角はなかりけり 籬朱子
湯豆腐や団欒(まどゐ)はくづれやすきもの 長谷川忠臣
鯨起たせて濤の大きく裏返る 田口くらら
狼や傭兵に母国は要らず 藤森そにあ
【次回の投稿のご案内】
◆応募締切=2024年4月30日
*対象は原則として2024年4月中に発刊された俳句結社誌・同人誌です。刊行日が締切直後の場合は、ご相談ください。
◆配信予定=2024年5月5日
◆投稿先
以下のフォームからご投稿ください。
https://ws.formzu.net/dist/S21988499/
【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】