――滋賀って鰻って有名なんでしたっけ?
中井 有名な店はいくつかあるんですけど、この辺は多くはないですね。最初はフレンチやろうと思ってたんですけど、年中やらなあかんでしょ。そしたら懇意にしてる鰻屋さんが、ほんなら鰻やってみるか言うて、6月から9月の夏季限定ではじめることにしたんです。
――どのエリアからのお客さんが多いんでしょう?
中井 県外のお客さんは多いですね。東京のお客さんとかもいますけど、やっぱり関西方面かな。逆に地元の人が少ない(苦笑)
――完全予約制といわれると、ちょっぴりハードルが高いですよね…
中井 営業はお昼だけですし、値段もそこそこするんで、一日ゆったり旅行して帰るみたいな方が多いかもしれませんね。
――通常であれば、いつごろまで予約は取れるんですか?
中井 今年の分はもう予約が入ってきてます。去年も7月20日くらいまでは営業してたんです。8・9月もびっちり予約が入ってたんやけど、万が一店で感染者でも出たら「浪乃音」にひびく言うて、みなさんに電話してキャンセルさせていただいたんです。
◎進化する日本酒の世界
――ぼくもお酒好きで飲むんですけど、やっぱりここ10年くらいで劇的に美味しくなりましたよね。汰浪さんから見て、ここ10年くらいでいちばん変わったことって何か教えていただけますか。
中井 すごい変わってますよ! 吟醸、純米酒、古酒とブームも変わってますし。もうどれが美味しいってのも難しいくらいたくさん美味しいお酒があるんでね。だから逆に自分の好みってのが変わらないんだなと思うようになりました。
――汰浪さんの好みはどんな感じのお酒ですか?
中井 どっちかいうたら一年くらい寝かした、甘い感じのお酒を濃いめの味の料理に合わせて食べるのが好きなんですよ。
――まさに鰻のタレのような。
中井 そうそう。でもスッキリした味わいのお酒も好きですよ。発泡系の濁ったお酒とかも飲んだりします。もともとお酒弱かったんで、外でたら仕事では飲むんですけど、家ではまったく飲まなかったんですよ。でも今回のコロナのせいで……もう毎晩飲んでます(笑)
――やっぱり晩酌は日本酒ですか?
中井 ちょっとビール飲んで、日本酒飲むみたいなかたちで。50歳にして晩酌はじめたみたいな(笑)
――それYoutubeとかで中継したらいい宣伝になるんじゃないですか? 「蔵元の晩酌」っていう番組つくったりして…(笑)
中井 好みってあるんですよね。蔵にいま飲みたい酒取りにいくと偏りが出るんです。「あっ、俺はこれ持って帰らへんのやな」って気づく。以前は「浪乃音」でオススメを訊かれたら「全部美味しいですよ」って言うてたんですが、最近はいま飲んでる酒をオススメするようになりました。
――ほかにこの10年で変わったことありますか?
中井 ぼくらが酒造り教わったのはだいぶ前なんで、もう二世代くらいは進化してます。福島の「天明」さんの酒造りを息子伝いに聞いたりするんやけど、ぜんぜんちがう。何が違うって、いちばんは設備がちがうんです。
いまは「火入れ酒」っていうのがよく出ていて。火を入れない「生酒」っていうのは、杜氏の腕で何でもカバーできるんですけど、「火入れ」の場合は設備なんです。何千万という設備を買えば、誰でも美味しい酒ができる。だから設備投資のできる蔵しかいい「火入れ」はできないですね。だからうちは「生酒」がけっこう多いです。
――でも、「生」も冷蔵技術とかが進んで、だいぶ手広く飲めるようになりました。
中井 そうですね。うちはオススメを訊かれたら「生」を勧めるようにしてるんですけど、いまは「生」みたいな「火入れ」の酒もあるんです。ぼくらでもどっちかわからないのがある。ここ最近の話ですけど、すごく技術が上がってます。
――お米の味自体はあまり変わってないけど、作るプロセスが変わっているということなんですか?
中井 お米もだんだん変わってます。一言でいえば、だんだん「かたく」なってると思います。ふっくらとしたイメージのある山田錦でさえ、「かたく」なってる。
――お米が「かたい」というのは?
中井 ちょっと専門的な話になりますが、昔だったら吸水を縮めてシビアに作っても「やわらかい」お酒になったんです。でも最近は、米が「かたい」から水にしっかりつけないといけない。温暖化とか気温の変化とかありますよね、きっと。だから、兵庫や滋賀でとれる山田錦よりも北の方でとれる山田錦のほうがいいお酒が作れるかもしれない。
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