連載・よみもの

「野崎海芋のたべる歳時記」鯛の塩釜焼き


鯛の塩釜焼き

Daurade en croûte de sel


一昨日は朧の満月がきれいでした。

春分後の満月から数えて最初の日曜日は、イースター。今年は4月3日となります。

フランスではPâques(パック)といい、この時期、イースターのシンボルをかたどったチョコレートがお店に並びます。卵やにわとり、うさぎ、教会の鐘、そして魚。

卵は生命の象徴ですし、うさぎも多産のシンボル。どちらもキリスト教以前、古代の春の祭りの名残をうかがわせるものです。

一方で魚は、古くからキリストを表すシンボルとされてきました。フランスでは金曜日に魚を食べる風習がいまも生活の中に根づいていて、うちの子供の学校給食メニューも、金曜日はだいたい魚(切身のフライ)でした。

さて、今日4月1日は、エイプリルフール。フランス語でPoisson d’avril(四月の魚)と呼ばれます。
ここでもまた、魚。

ただ、こちらはキリスト教ではなく、むかし春の禁漁期に入る前の最後の漁の日が4月1日だったことに由来するようです。

フランスでは子供たちが、紙で作った魚をこっそり人の背中に貼りつけてからかうというのが、エイプリルフールのお約束。

子供のクラスの先生が、背中じゅうに魚の絵をたくさんくっけられていたのを思い出します。

鯛の塩釜焼き。
塩釜焼きは鱸やメバルなど、何の魚でもおいしいのですが、今の時期ならやはり、大ぶりの桜鯛を使います。
春、産卵のため沿岸部に集まってくる真鯛を桜鯛と呼びます。桜の咲くころ旬を迎えるからだとも、産卵期の体色が美しい桜色になるからだとも言われます。
私のレシピは鱗の上から卵白を塗って粗塩で覆うだけの、簡単バージョン。お腹にハーブの束をしのばせて香りよく焼き上げます。

ちるさくら海あをければ海へちる  高屋窓秋

季語【桜】【朧】【春の月】【復活祭】【四月馬鹿】【桜鯛】

*本記事は野崎海芋さんのInstagram( @kaiunozaki )より、ご本人の許可を得て、転載させていただいております。本家インスタもぜひご覧ください。


【執筆者プロフィール】
野崎 海芋(のざき・かいう)
フランス家庭料理教室を主宰。 「澤」俳句会同人、小澤實に師事。平成20年澤新人賞受賞。平成29年第一句集『浮上』上梓。俳人協会会員。



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第38回】 信濃・辰野と上田…
  2. 【第4回】ラジオ・ポクリット(ゲスト: 大西朋さん・白井飛露さん…
  3. 「野崎海芋のたべる歳時記」和風ロールキャベツ
  4. 【短期連載】茶道と俳句 井上泰至【第8回】
  5. 【連載】もしあの俳人が歌人だったら Session#4
  6. 【短期連載】茶道と俳句 井上泰至【第2回】
  7. 【短期連載】茶道と俳句 井上泰至【第6回】
  8. 【#22】鍛冶屋とセイウチ

おすすめ記事

  1. 「パリ子育て俳句さんぽ」【9月18日配信分】
  2. 【秋の季語】立秋
  3. 【夏の季語】草田男忌/炎熱忌
  4. 【新年の季語】田遊
  5. 【春の季語】春野
  6. 小満の風や格言カレンダー 菅原雅人【季語=小満(夏)】
  7. 姦通よ夏木のそよぐ夕まぐれ 宇多喜代子【季語=夏木(夏)】
  8. 秋草の揺れの移れる体かな 涼野海音【季語=秋草(秋)】
  9. 【夏の季語】サマーセーター/サマーニット
  10. てつぺんにまたすくひ足す落葉焚 藺草慶子【季語=落葉焚(冬)】

Pickup記事

  1. 神保町に銀漢亭があったころ【第67回】鷲巣正徳
  2. 若き日の映画も見たりして二日 大牧広【季語=二日(新年)】
  3. 【夏の季語】桐の花
  4. 人はみななにかにはげみ初桜 深見けん二【季語=初桜(春)】
  5. ほほゑみに肖てはるかなれ霜月の火事の中なるピアノ一臺 塚本邦雄
  6. かくも濃き桜吹雪に覚えなし 飯島晴子【季語=桜吹雪(春)】
  7. 牛日や駅弁を買いディスク買い 木村美智子【季語=牛日(新年)】
  8. 俳人・広渡敬雄とゆく全国・俳枕の旅【第37回】龍安寺と高野素十
  9. 背広よりニットに移す赤い羽根 野中亮介【季語=赤い羽根(秋)】
  10. 胴ぶるひして立春の犬となる 鈴木石夫【季語=立春(春)】
PAGE TOP