アゴラ・ポクリット

「ハイブリッド句会」の勧め!


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アゴラ・ポクリット
【#1】
「ハイブリッド句会」の勧め!

種谷良二(「櫟」東京支部長)


ウィズコロナの中で句会をどのような形で続けていくか運営者は試行錯誤しているのでは。かく言う私も句会を二つ運営しており、昨年の緊急事態宣言の頃から、人数を限り部屋の窓を全開にしてリアル句会を開催したり、メールやSNSを使ってネット句会にしてみたり模索をしてきたところ。やはり俳句は「座の文芸」。俳諧の連歌の昔から老若男女が集ってコミュニケーションするのが一番。しかし、こんな状況下では、句会メンバーの中にも、リスクがあってもリアル句会を実施すべきだという意見がある一方、こんな時期に「不要不急」の句会をやるのは非常識という声もあるところ。

ある時、人に勧められて話題の「夏雲システム」を使ってネット句会を開催してみたら、これが大変な優れもの。誰が作ったか知らないが、句会運営者の要求を満足させる「痒いところに手が届く」システムだ。使いながらふと思ったのは、これはリアル句会にも使えるのではということ。これを使えば句会当日短冊を持参する必要もないし、清記も要らない。清記用紙を回さないから接触によるコロナ感染リスクもない。いつも感じる「俺の名句、もっと綺麗な字で書けよ!」という不満もなくなる。披講でデカい声で名乗らなくてもいいので飛沫も飛ばない。誰にもお世話にならずに欠席投句もできる。その結果、講評のディベートに十分な時間を充てることができ議論が深まる。いいことばかりではないか。

ということで、早速「夏雲システム」を使ってリアル句会とネット句会の「いいとこ取り」の「ハイブリッド句会」を企画してみた。

基本的なコンセプトとしては、

  • 折角システムを使って遠隔からも参加できるのであるから、結社を超えた、誰でも参加できる多様性豊かな句会とすること。
  • 一方的に指導する立場の主宰を作らずフラットな関係の中で自由な議論を楽しむこと。
  • 原則として俳号で参加するアノニマスのものとし、お互いの情報を予め共有することなく句会の後で気になった句の作者がいれば管理者が知っている限りで情報提供をすること。

などとした。

これを前提に、参加者を募り、参加者全員に「夏雲システム」を使って投句・選句・講評してもらい、その中で当日可能な人だけ会場に集まりリアル句会では夏雲の結果を見ながら講評のディベートを楽しむこととした。結社内外に声掛けをしたところ、年齢的には10代の高校生から70代後半まで、句歴も始めたばかりの初心者から30年以上のベテランまで、結社所属者はホトトギス系から現代俳句系まで、男女比率ほぼ半々の27人に参加してもらうことができた。

土曜日の午後2時からリアル句会を都内某所で開催することとし、前日金曜日の午後10時を夏雲の投句締め切り、リアル句会の始まる土曜日の午後2時を選句締め切りとし、リアル句会が始まる時間に自動的に選句結果は公開されるものの作者の公開はリアル句会で各句の講評ディベートが終わるころを見計らって管理者が手動で公開することとした。

リアル句会には27人中6人が参加し各自スマホ片手に午後2時の結果公開を待つ。公開後高点句から選句理由、選句しなかった理由等をディベート。その際夏雲に書かれた他人の選評も参考にしつつ充実したディベートができた。ディベートが一段落した段階で作者を公開。高得点者から並べられるので入試の合格発表のように盛り上がった。なお、夏雲は句会の結果の「会報」までPDFで作成してくれるので句会の記録も紙で残せる。正に至れり尽くせりだ。

こんなやり方で「ハイブリッド句会」の第1回試行をやってみた。出自多様な27人で一人5句出し、合計135句からの5句選で、選句結果は相当ばらけるかと予想していたが、結果としては意外と高点句が固まった。総評としては、リアル句会に参加できた人からもできなかった人からも概ね好評であった。

参加者からの意見をもとに進化させ、来月もこの方法でやろうと思っている。既にこんな方法でやられている句会もあるかとは思うが、悩める句会運営者の一助になれば幸いである。


【執筆者プロフィール】
種谷良二(たねや・りょうじ)
1958年東京都生まれ。「櫟」殻斗集同人兼東京支部長。俳人協会会員。



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