冬の季語

【冬の季語】兎

【冬の季語=初冬〜晩冬(11〜2月)】兎

近代に入ると、ウサギの輸入が始まった。ウサギの毛皮が陸軍における防寒着の材料として用いられたため、「兎狩」に対する需要が高まったこともあり、「兎」もまた冬の季語とされている。

撃たれし血口に含みて兎死す 野見山朱鳥

のように「兎狩」の場面を詠んだ句もある。

因幡の白兎や『不思議の国のアリス』の時計をもった白ウサギのように、文学的テクストのなかにも、ウサギはしばしば登場してきた動物ということで、「兎」は上記のような由来を超えて、自由に楽しく詠まれる題材ともなっているが、愛玩用としての「兎」は季節感に乏しいため、

新涼のましろき兎飼はれをり 阿部みどり女

のように、わりとほかの季節の季語を通じて詠まれることも多い。

「雪兎」は、雪の中にいるウサギのことではなく、雪でつくったウサギのこと。


【兎(上五)】
兎落つ雪まみれにて陰赤く 加藤知世子
白兎あすあさってを吐きつくす 夏石番矢
兎の目よりもムンクの嫉妬の目 森田智子

【兎(中七)】
城内に兎狩する枯野かな 野村泊月
逆吊りの兎を軒に麓村 藤木倶子
雪散らし兎の罠の締りけり 小島健
恋の刻急げ アリスの兎もぐもぐもぐ 中村憲子
またぎの子くるぞ兎は耳隠せ 田中一光
心臓の近く兎を眠らせる 大石雄鬼
よきことのやうに兎のあつまりぬ 森賀まり
君の抱く兎を嫉みゐたりける  藤井あかり
道が野にひらけて兎いま光 神野紗希

【兎(下五)】
穂すゝきのなみ飛越ゆる兎かな 大原其戎
吹越に大きな耳の兎かな 加藤楸邨
ももいろの欠伸をひとつ夜の兎 石寒太

【その他の季語と】
短日の兎に白き山ばかり 宇佐美魚目
雪が来るうさぎの耳とうさぎの目 青柳志解樹


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