【秋の季語】厄日

【秋の季語(初秋=8月)】厄日

一般的には陰陽道などで「災難が起こりやすいとして忌む日」を指すが、俳句では立春を起算日として二百十日目のこと(立春の209日後の日)をいう。「八十八夜」などと同じく、(農作業の目安としての)雑節と呼ばれる節目のひとつ。「八朔」(旧暦8月1日)や「二百二十日」とともに、農家の三大厄日とされている。

多くの歳時記の見出しには、「二百十日」とあるものの、やや長くて使いにくいので、季語としては3音の「厄日」のほうがより使われるフレーズ。たいていは、新暦の8月31日か、9月1日に相当する。

厄日=9月1日に台風が多いという客観的データはないらしい。しかしこの日に関東大震災が起こったということは、偶然であるにしても、この日の「厄」性を忘れられないものにしているようにも思われる。

厄日を描いた作品で最も有名なのは、何といっても、宮沢賢治『風の又三郎』(1934)。作中年では、9月1日が「二百十日」であったが、この設定は、原型のひとつである『風野又三郎』(1924) の設定と同じである。


【厄日(上五)】
厄日来て糊効きすぎし釦穴 能村研三
厄日過ぐ身を締むるものみな外し 神田ひろみ

【厄日(中七)】

【厄日(下五)】
小百姓のあはれ灯して厄日かな 村上鬼城
ひらひらと猫が乳呑む厄日かな 秋元不死男
川波も常の凪なる厄日かな 石塚友二
四五人の声が田を行く厄日かな 黛執
狛犬の影につまづく厄日かな 小室誠
鏡台が散らかつてゐる厄日かな 堀切克洋

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