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初鰹黒潮を来し尾の緊まり 今瀬一博【季語=初鰹(夏)】

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初鰹黒潮を来し尾の緊まり

今瀬一博


ご存知のように、鰹は旬が二度あるめずらしい魚。3月ごろ、九州の南の方から黒潮にのって北上し、8月頃には北海道の南まで辿り着くと、そこから今度は産卵に備えて南下してゆく。後者はいわゆる「戻り鰹」で、脂ののったもっちり感がたまらない。一方で、掲句で詠まれているのは「初鰹」。餌を求めて太平洋を北上していく鰹の「尾の緊まり」に焦点を当てていることで、そのでっぷりとしながらも引き締まった体躯が見えてくる。省略は俳句の勘所だとはよく言われるが、「尾の緊まり」でその他の部分を置き換えたわけではなく、その他の部分を暗示させているところが技法である。「初鰹」という季語もまたそうで、秋になって南へと戻ってくる鰹の一生もまた見えてくる。「俳句四季」2020年6月号より。(堀切克洋)


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