ハイクノミカタ

初鰹黒潮を来し尾の緊まり 今瀬一博【季語=初鰹(夏)】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

初鰹黒潮を来し尾の緊まり

今瀬一博


ご存知のように、鰹は旬が二度あるめずらしい魚。3月ごろ、九州の南の方から黒潮にのって北上し、8月頃には北海道の南まで辿り着くと、そこから今度は産卵に備えて南下してゆく。後者はいわゆる「戻り鰹」で、脂ののったもっちり感がたまらない。一方で、掲句で詠まれているのは「初鰹」。餌を求めて太平洋を北上していく鰹の「尾の緊まり」に焦点を当てていることで、そのでっぷりとしながらも引き締まった体躯が見えてくる。省略は俳句の勘所だとはよく言われるが、「尾の緊まり」でその他の部分を置き換えたわけではなく、その他の部分を暗示させているところが技法である。「初鰹」という季語もまたそうで、秋になって南へと戻ってくる鰹の一生もまた見えてくる。「俳句四季」2020年6月号より。(堀切克洋)


【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 山頂に流星触れたのだろうか 清家由香里【季語=流星(秋)】
  2. 雛飾る手の数珠しばしはづしおき 瀬戸内寂聴【季語=雛飾る(春)】…
  3. 松過ぎの一日二日水の如 川崎展宏【季語=松過ぎ(新年)】
  4. 馬鈴薯の一生分が土の上 西村麒麟【季語=馬鈴薯(秋)】
  5. 原爆忌誰もあやまつてはくれず 仙田洋子【季語=原爆忌(秋)】
  6. 前をゆく私が野分へとむかふ 鴇田智哉【季語=野分(秋)】
  7. 雛納めせし日人形持ち歩く 千原草之【季語=雛納(春)】
  8. ががんぼの何が幸せ不幸せ 今井肖子【季語=ががんぼ(夏)】

あなたへのおすすめ記事

連載記事一覧

PAGE TOP