ハイクノミカタ

神は死んだプールの底の白い線  高柳克弘【季語=プール(夏)】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly
画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: eye-2horikiri--1024x538.png

神は死んだプールの底の白い線

高柳克弘


ニーチェ後の世界を一言でいうならば、客観性そのものの定義が揺らぎ、一種の相対主義へと陥ったことだ。それは21世紀に入って「ポスト・トゥルース」という標語とともに、ますます混迷を極めている。掲句において、プールの底の白い線はたしかにそこに「ある」のだが、それは水のきらめきとともに、ゆらゆらと、不確かにゆらめいている。俳句でいえば、それは季語の「本意・本情」のようなものだろう。それは確かに「ある」のだが、時代変われば、それを支えている伝統の解釈も変わる。見る人が変われば、「白い線」の見え方は変わる。誰もがプールの底に「白い線」が「ある」と信じられていた時代は、それこそ水の向こう側に、まばゆい残像を残すのみである。『寒林』(2016)より。(堀切克洋)



【セクト・ポクリット管理人より読者のみなさまへ】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • follow us in feedly

関連記事

  1. 石よりも固くなりたき新松子 後藤比奈夫【季語=新松子(秋)】
  2. 日の遊び風の遊べる花の中 後藤比奈夫【季語=花(春)】
  3. 麦真青電柱脚を失へる 土岐錬太郎【季語=青麦(夏)】
  4. 多国籍香水六時六本木 佐川盟子【季語=香水(夏)】
  5. 追ふ蝶と追はれる蝶と入れ替はる 岡田由季【季語=蝶(春)】
  6. 麦からを焼く火にひたと夜は来ぬ 長谷川素逝【季語=麦からを焼く?…
  7. おとつさんこんなに花がちつてるよ 正岡子規【季語=花散る(春)】…
  8. 松葉屋の女房の円髷や酉の市 久保田万太郎【季語=酉の市(冬)】

あなたへのおすすめ記事

連載記事一覧

PAGE TOP